2014年6月30日月曜日

ラマダン初日にカリフ宣言

最後のカリフ(スルタン)メフメト6世
TVや新聞ではお気楽なニュースが流れているが、我が家では夕食時、無茶苦茶緊迫したのである。イスラエルにいる息子からメールがあって、「カリフ宣言したらしい。」との情報がもたらされたからだ。
毎日新聞の夕刊にたしかに、「イスラム国樹立宣言」とある。イラクのISIS(日本ではISILと称している。)の中心者が、全イスラム国に対して忠誠を要求したというのだ。日本は、こういう一神教にまつわるニュースにうといので、はるかに信用できるウォール・ストリート・ジャーナルのWEBニュースを見てみた。

http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303844704580000151170593066

妻とこれからどうなるのだろうと語り合いながら夕食となった。中田考氏は、カリフの復活を訴えていた。この本(5月21日付ブログ参照)を我が夫婦は読んでいた故に大論争になったわけだ。
オスマン=トルコ帝国の崩壊以来、空位になっていたカリフになったと、ISISの指導者が宣言したということは、16億人のイスラム教徒を統一し、イスラム国の再編を目指すということである。イスラムの本義は、欧米世界中心概念である個人主体ではなく、あくまで共同体の幸福追求である。中田考氏の言うイスラムの理想形は、我が夫婦が共通理解するところだ。だが、果たしてうまくいくのだろうか。

ISISはスンニー派の組織であり、アルカイダから過激派内での主導権を奪おうとしている、要するに、ひとつのパフォーマンスだというのが西側の理解だ。しかしスンニー派、特にワッハーブ派のサウジがこのカリフを認めた場合、どうなるのか。またイランをはじめとしたシーア派はどう動くのか。下手すると、イスラム世界の中で凄い戦いになるかもしれない。

「カリフが復活する」ということは、そんな簡単な話ではない。もし、反欧米(キリスト教)的なイスラム勢力が統一されれば、世界は大きく変わる。だが、諸刃の剣のようなもので、イスラム内の主導権争いが激化する可能性も十分あるわけだ。

毎日の朝刊には、29日、サウジアラビア内務省がラマダン開始にあたり、国内にいる異教徒に対しても断食をするよう要請、違反した場合処罰対象になると警告したという記事が載っていた。またマレーシアでは、23日、非イスラム教徒が「アラー」という神を意味する言葉の使用を禁止するとの最高裁判決が出た。これは、マレー語のキリスト教の聖書で神を意味する上で、どう表現するかという問題らしい。これらのイスラムの教義厳格化の動きは、もちろん今日のカリフ宣言の前の話だが、私は妙に気になる。ハンチントンの「文明の衝突」を読んで久しい。が、彼の予言どうりになっていくような危うい予感がするのだった。

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