2012年5月5日土曜日

アフリカ開発経済学テキスト改訂

このGW後半は、体調を整えるとともに、7月の国際理解教育学会での発表の準備をしている。5月中に「抄録」を事務局に送らなければならない。ずっと、あーでもない、こーでもないと考えているのである。今回の発表のテーマは、私の「高校生のためのアフリカ開発経済学テキストV4.01」の改訂である。4年前に私が初めて発表した時、アクティビティの罠について語り、その対案としてこのテキストを提示した。

このオリジナル・テキスト、最初のV1.0はかなり薄っぺらい。地理Bの受験範囲を終えてからの、特殊講義プリントという感じだった。開発経済学は、経済成長を重視する。資本の蓄積と生産性の向上という視点からアフリカの経済を見ることを主眼としていた。アジアの発展とアフリカの停滞という対比がテーマだったといってよい。V2.0も同様だが、アマルティア=センの貧困の定義を入れた。

本格的なテキストは、V3.01からである。(学会で発表したのもこれである。)主な視点は、①上記の経済成長から見たアフリカ経済の問題点②セン、ジェフリーサックス、そしてポールコリアーの4つの罠という開発経済学の成果からアフリカを論ずること、③近代国家論から、アフリカを論ずること、④アフリカの農業・工業などの検討などである。ここで、⑤私が重要だと思うアフリカ理解のためのキーワードを何点か挙げた。

で、前任校から本校に転勤寸前に、V4.01を作った。V3.01を元に①表現をわかりやすくすること、②「貧困とはなにか」を前面にだし、センの定義と人間の安全保障をまず学ぶこと、③開発経済学の成果に、ダンビサ=モヨを追加すること、④グローバリゼーションと中国の進出というアフリカの現状を紹介すること、⑤ブルキナのIさんの詩の挿入、などを行ったのだった。

様々なアフリカの変化や、私自身のアフリカの開発に対する研究(と言うほどのものではないが…)の積み重ねの中で、ヴァージョンを挙げてきた。今、考えているコトは、第一に経済成長という切り口や近代国家論以上に必要な切り口があるのではないか、ということである。これまでは、センとサックスの理論をもとにHDIという切り口も入れてみたが、こういう数値ではかれない部分がアフリカにはずいぶんある。
第二に、これまで地理でアフリカを学んだ生徒を念頭にテキストを作ってきたことへの反省である。『アフリカ学入門』にあるように、多くの大学生でさえ、アフリカは身近ではない、まして高校生に教えるとなれば、基礎的なアフリカ地誌を教える必要がある、ということである。また、同時に南アを除いたサブ=サハラ・アフリカを平面的に論じてきた反省もある。人間の安全保障が重要な国、経済的には成長率も上がっているが、資源の罠に陥っている国、比較的ガバナンスが良く発展が顕著な国、かなりの格差がある。

うーん。と唸るのである。このテキストをいかに再構成するか。もう1日大いに悩むつもりだ。

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