佐賀新聞より借用しました |
今読んでいる石破茂の文庫本『国防』の中で、なるほどと思ったことがある。「私は2001年の「9.11」以前のアメリカと以降のアメリカは間違いなく別の国になったと思っている。それまで、アメリカは強大な軍事力を持つことで、「どこからもやられない」という神話を作ってきた。それが崩れたのである。軍事力の優位が国の安全を保障しなくなった。以来、自衛のための「先制攻撃」を認めるようになった。(趣意)」と言うのだ。アルカイーダは、超大国アメリカの国防戦略を転換させるほどの一撃を加えたのだ。よって、欧米先進国が、イスラム原理主義を蛇蝎のごとく敵視することも理解するところである。
要するに、イスラム原理主義に対して、私は完全中立の立場にあるのだが、今回のソマリアの過激派武装集団でアルカイーダと関係があるという「アルジャバブ」は、ちょっと別だ。
このところ、ソマリア情勢に対しては、ニュースの頻度が増した。飢餓への支援額が不足しているという国連の報道から始まり、アルバジャブが食料支援を拒否しているという報道、受け入れたという報道、AU軍とアルシャバブが首都モガデシオで武力衝突したという報道、AU軍がPKOの後方支援を要請したという報道、そして首都からアルバジャブを追い出したという報道と続いているが、アルバジャブ自体は、「十字軍」への巻き返しを叫んでいる。
うーん。これだけの飢餓を目の当たりにして、あまりにアルバジャブは、幼稚であると言わざるを得ない。彼らは「天命」を信じる人々だから、子どもたちの餓死も「神のおぼしめし」だと片づけるのだろうか。”十字軍”の助けを受けず餓死すると「天国」にいけると信じているのだと思われる。他のイスラム原理主義者は、この事態をどう受け止めているのだろうか。
以前アフガンのタリバン関係の本を読んでいて、指導者であったオマル師の署名があまりに稚拙な文字(小学生の文字の様)であったという記述があった。学歴や知識で人間は計れないことは自明の理であるが、一国の指導者となれば、そうはいかないことも多い。まるで文革の紅衛兵である。文革の10年で中国は失ったものはあまりに大きかったというのが今や定説である。
もちろん、先進国の責任は大きい。貧困からくる教育の未整備がこのような動きをつくったという側面もある。ブルキナで、私は荒熊氏とフィールドワークをした際に、イスラムの神学校の生徒(というとカッコいいが、事実上口減らしで家を出された子どもたち)が、仏教でいう乞食行(こつじきぎょう)を行っている姿を見た。一応アラビックでコーランを読めるとしても、それだけで生きていけるわけではない。
紛争があるところでは、結局貧困が、彼らをソルジャーに仕立てていく。彼らの生命の値段はあまりに安い。食事が与えられ、わずかに極貧から抜け出せる希望があるこそソルジャーになるからだ。ソマリアの原理主義者の若者も同様の道を歩んできたのだろうか。
貧困のスパイラル。紛争の罠。世界No1の失敗国家というソマリアの悲劇に心が痛むのである。
追記(8・18付):尾崎さんというトルコ在住の方から、アルシャバブに対する反駁のコメントがありました。日本では全く流れない情報が以下のブログに書かれています。興味のある方は是非ともアクセスしてください。
はじめまして。
返信削除ロイターなどの報道は西欧諸国に都合の良いことしか書いてありません。もし別の角度からもご検討いただければまた違ったお気持ちになるのではと存じます。
ソマリア、そのほか大きな問題を抱えた国は「天命」によって苦しんでいるわけでは決してありません。
私のブログでもソマリアのことはふれておりますので、よろしければお越しください。
http://turezurebana2009.blog62.fc2.com/
尾崎文美さん、コメントありがとうございます。
返信削除ブログ拝見しました。かなりショッキングな内容でした。日本では全く手には入らない情報だと思います。おそらくムスリムの方とお見受けしますが、私の浅い知識と限界を教えていただき、感謝します。非常に勉強になりました。
なお、このエントリーを書いた時点では、こう考えていましたので訂正はいたしませんが、尾崎さんのブログも読んでいただくように追記します。
なお、反駁したいというリアクション、先ほど変えました。尾崎さんのように真摯な反駁のコメントをいただけないので、悲しい思いをしていたからです。御理解下さい。
これからも、いろいろ書きますので、反駁があればどんどん書いてください。
尾崎さんへのコメントの追加です。どうもBLOGGERのシステムがちょっとおかしいようです。エントリーの編集ができません。追記したいのですが、少しばかり時間をいただくことになりそうです。ご理解下さい。
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