ガーナに、理数科教師としてJICAのシニア・ボランティアとして参加しておられる”教授”(もちろんニックネームである。)が、健康診断のために帰国されていて、同じJICAの教師研修でケニアを視察した仲間(ピーター会)の報告会が、大阪は天満橋のエル大阪の会議室で開催された。静岡や金沢からも、当時のメンバー総勢8名が集まった。いやあ、凄いことだ。”教授”は、古くから、様々な楽しい科学実験を通じて理科学習への興味を広げることをライフワークにされている神戸の公立高校の先生である。今は、ガーナ第二の都市クマシで、教員養成カレッジの生徒を相手に指導をされているわけだ。
面白い話がたくさんあって、全部は紹介しきれない。で、今日明日に分けて紹介しようかと思う。私にとって、特に面白かったのは、ガーナの初代大統領エンクルマの影響である。”教授”は、ガーナの紙幣でよく使われる2セリー(120円くらい)札は、エンクルマだけが紙幣に描かれ、高額紙幣には歴代の大統領が描かれていると現物を見せてくれた。アメリカ同様、よく使われる紙幣の肖像ほど人気があるらしい。ところで、エンクルマは、社会主義者であった。このことには賛否両論がまだあるらしいのだが、その影響は、ガーナのいたるところにあるそうだ。
たとえば、市場でパイナップルを買うとする。どの店で買っても同じ大きさのものは同価格らしい。組合が伝統的に強く、市場のリーダーが価格を決めるらしい。こういう社会主義的なことはまだまだあって、サブ・サハラ=アフリカでは珍しく、健康保険がある程度いきわたっているらしい。(もちろん、安い病院には貧乏な人々が多く集まって大変らしいし、医者や看護師はエリートで高給取りなので、ずいぶん威張っているらしいが…。)また、教育現場でも、あまり競争主義は見られず互いに助け合うことが多いらしい。遅れている学生に、よく理解している学生が教えたりする良き面もあるが、試験中でも修正ペンを貸し借りする(彼らはボールペンで試験を受けるらしい。訂正には高価な修正ペンが必要で、これを所持している学生は少数であるらしい。)ような悪しき面もあるらしい。
私が見てきたケニア、ジンバブエ、ブルキナファソと比べて、様々な面で開発が進んでいるという感じを受けた。特に、就学率の面や教育内容は、ブルキナと比べてかなり良いと思ったのである。(もちろん、まだまだ問題は山積みだが…。)ところで、ガーナと言えば、『カカオ畑で働く学校にも生かしてもらえない児童労働』という開発教育でのアクティビティがある。実際には、ガーナでは就学率がかなり高いらしい。北部は、南部より貧しいので、子供が働くということはありうるが、親と子供の関係において、決して特別な話ではない、伝統的な子供のあるべき姿ではあるとのことだった。私は、アマルティア=セン的な潜在能力の立場から、子供が就学できないことは絶対なんとかしなければならない課題だと思うが、児童労働自体は、アフリカでは当然の伝統的家族関係の中のことであると理解している。先進国的な価値観を高慢に押し付けて批判するのはおかしいと思っている。あの社会福祉先進国となったイギリスでさえ、開発途上時は児童労働をバンバンやらせていたではないか。今回のガーナを体感されてきた”教授”の言で、あらためて確認させていただいた次第。
2011年8月12日金曜日
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