スミソニアン歴史博物館 |
当時の日系人への差別的なポスターや収容所の内部など、きわめて解りやすい、アメリカらしい展示だった。今日のブログの本題ではないので、詳細な内容は差し控えるとして、この日系移民の展示、タイトルは『多様性の統一』という。アメリカのコインにラテン語で書かれている、アメリカの国是の1つである。移民国家アメリカ。様々な民族がアメリカの理想のもとに統一されていくという意味である。何故こんなタイトルになっているかというと、展示の後半に、日系移民の息子たち(2世)が、自ら志願してヨーロッパ戦線で戦い、多くの血を流し、「われわれは日本人ではない。アメリカ人なのだ。」ということを実証したことが、これでもかというほど強調されているのである。中には、「我々が戦いたいのはドイツではない、日本だ。」という若者もいたという。(*今もこの展示があるかどうかは不明です。)
さて、昨日NHKで、『渡辺謙アメリカを行く・”9.11テロ”に立ち向かった日本人』という番組を見た。このタイトルにある「9.11テロに立ち向かった男」とは、ノーマン・ミネタ氏という日系2世で、当時の運輸長官である。彼は、ハワイ州(日系移民が最も多い)以外の本土(カリフォルニア州サンノゼ市長であった)で最初に下院議員となった人物である。民主党員でクリントン政権で商務長官、ブッシュの共和党政権下で運輸長官(日本でいう運輸大臣にあたる)になった日系人初の閣僚でもある。ノーマン・ミネタ氏は、9.11の緊急時に、米本土を飛ぶ4000にもおよぶ航空機をカナダなどの協力をとりつけ無事に着陸させた。(この辺の見事な危機管理能力を現日本政府は見習うべきだ。)問題は、その後である。多くの議員やマスコミは、アラブ系・イスラム教徒の航空機搭乗に対して『人種プロファイリング』を実施するように求めた。簡単に言ってしまえば、アラブ・イスラム系の人間を航空機に乗せるな、危なくて仕方がないという感情論である。これをノーマン・ミネタ氏は、敢然と否定するのだ。タイトルにある『”9.11テロ”に立ち向かった』というのは、この危機が招いたアメリカの多様性への統一という国是の否定に立ち向かったというのが正しいと私は思う。アメリカは自由であり、少なくとも機会均等という面では平等であることを国是としていると私は思う。憲法にも基本的人権が謳われている。ノーマン・ミネタ氏は、人種プロファイリングは正義ではない、と言い切った。
TVのキャプチャー画像 『肖像画』 |
その彼の確信の源を、この番組は探っていく。彼は太平洋戦争開戦時11歳。両親とともにワイオミング州のハートマウンティン収容所に送られた過去をもつのである。人種プロファイリングの犠牲者であったのだ。彼は、日系人強制収容を間違いだったと米政府に認めさせる法案も成立させている。だからこそ、アラブ系やムスリムへの不正義を許さなかったと言ってよい。彼の肖像画が運輸省にある。そこには収容所での家族の姿も描かれている。なんという感動的な肖像画か、と私は思った。いい番組だった。
ところで、ノーマン・ミネタ氏の履歴を調べてみた。カリフォルニア大学バークレー校の出身で、その後(1953年)陸軍に入っている。韓国や日本で情報将校だったというから、朝鮮戦争が休戦した直後の話である。アメリカでは、軍出身者など掃いて捨てるほどいる。彼が特別だということはない。反対に言えば、アメリカのために、一度は命を捨てる覚悟をした人間でないと、いかなる人種であれ、そして特に日系人は信用されないという事実なのである。番組では、触れられていなかったが、彼は収容所から、兄の世代が戦場に行くのを見送ったはずだ。アメリカ人となるために、残った親兄弟をアメリカ人と認めさせるために…。
多様性のない単一民族国家(アイヌの方などもおられるが、あえてこう書いておきたい。)日本ではありえない、アメリカにおける民族アイデンティティの確立方法なのである。アメリカでの自由は、アメリカのために血を流した者に与えられるのである。
*TVのキャプチャー画像はBrilliant lifeさんから借用しました。
http://ameblo.jp/brillianteveryday/entry-10962764209.html?frm_src=thumb_module
*TVのキャプチャー画像はBrilliant lifeさんから借用しました。
http://ameblo.jp/brillianteveryday/entry-10962764209.html?frm_src=thumb_module
きっちり録画をしておりまして、いまから週末に見るのを楽しみにしています。こういう番組を見ると、NHKって必要だなぁって、しみじみと思ってしまいますね。
返信削除非常勤講師さん、コメントありがとうございます。なかなかいい番組でした。我が家はNHK中心家庭ななので、ホントそう思いますね。
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