コーヒーで身体を洗う母親 |
ダサネッチは、ケニアとの国境付近に居住する農牧民である。オモ川の氾濫を利用してモロコシ耕作も行うが、自らを「家畜の人々」と位置付け、牛・羊・ヤギなどを飼育している。100年ほど前から、ダサネッチの住むサバンナにもコーヒー豆が流通しだした。しかし帝政崩壊後、政府がコーヒー豆の国内流通を規制した故に、コーヒーの『殻』(豆を取った後に残った、外皮・果肉・内果皮の混ざったもの)のみが流通するようになった。(ダサネッチは、市場でこの『殻』をミルクやモロコシを売って得た現金で購入するらしい。ここにも市場経済の波が訪れているわけだ。)
『のどの渇きが私を殺す』とは、彼らが最もよく口にする言葉のひとつ。朝放牧に出す時間、昼放牧から帰り作乳する時間、再び放牧に出し戻す時間の一日三回、家の中で『殻』を調理し飲むのである。面白いのは、コーヒーの殻は再利用されることだ。一回使ったものを天日干しする。さらにそれを2日間天日干しし、火であぶり握りつぶして粉状にするらしい。飲む時は何も入れない。ただし、身体の調子が悪い時は、玉ねぎや生姜、チリペッパーを入れたりするらしい。ダサネッチは、オモ川の生水は飲まない。コーヒーは重要な水分補給源なのだ。さらに、『殻』は豆よりカフェイン含有量が多いらしく、疲労回復効果があるという。また乾季などでは、家の中で火を焚くのでサウナ状態である。そこで何杯もコーヒーを飲むので凄い汗をかく。これも身体にいいらしい。…なるほど。なるほど。
ダサネッチと佐川先生 |
ところで、ダサネッチから少し南下するとサンブル人らの住むケニアである。ケニアでは、コーヒーではなく紅茶らしい。ダサネッチに言わせると、「味がない紅茶(劣った飲み物)に高い砂糖を入れて飲む彼らは、だから(現金を得るため)家畜を売らねばならず、ビンボーになる」のだそうだ。(笑)だが、最も笑えたのは、ダサネッチの人々、…実は凄い「猫舌」だという話だった。
この佐川論文、なかなか面白かった。オモ川という水が豊かな地域故に、ダサネッチの人々はコーヒーをバンバン飲んでいるわけだ。彼らの住んでる地域も、60年来という東アフリカの干ばつ被害の影響を受けている可能性が高い。今、彼らのコーヒーライフはどうなっているのだろうかと私はたいへん心配している。
http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/member/sagawa.html
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