2010年12月15日水曜日

スイス航空アフリカ便の存在理由

 スイス航空は、なぜアフリカの17カ国へ飛んでいるのでしょう。
それは、ここには石油、禁、ダイヤモンド、銅、鉄、プラチナ、木材、ココア、ナッツ、ゴム、タバコ、スパイス、果物、コーヒー、綿花、それに珍しい動物やすばらしい砂浜があるからなのです。
デア・シュピーゲル誌の広告(1972年) アフリカの選択/マイケル・B・ブラウンから引用。
 この文章は、「高校生のためのアフリカ開発経済学」の初版の最初のページにイントロダクションとして私が置いたものである。最新ヴァージョンでは、ブルキナ在住のIさんの詩「バナナ売りの少女」をイントロダクションに使い、アマルティア=センの貧困から学習するように再編した関係で、アフリカの文化を理解する様々なキーワードを学んだ後に置いている。

 このスイス航空の広告コピー、実は欧米のアフリカ観をいみじくもよく表している。アフリカの選択の著者、マイケル・B・ブラウンの指摘である。今日は、地理Aで、試験を返した後、この文章を元に授業を組み立てた。英語科の方は当然、MW校の留学生6人もいっしょである。

 まずテキストを読む。…のだが、英語科では代表生徒に、太字の部分を英訳させた。(1年生でありながらなかなかたいしたモンであった。)黒板に、アフリカにある項目を書いて、MWsにも確認していく。私が生徒に理解させたいことは、我がブログの読者のみなさんなら、もうおわかりだと思うが、「人間」や「文化」といった視点がないこと。つまり欧米は、アフリカの人間や文化に価値を置いていないこと。その誤りを正したいのである。(当然マイケル・B・ブラウンの指摘でもある)

 そこで、日本の航空会社の広告コピーを考えさせてみる。文脈はスイス航空と同じ。日本には…があるからなのです。MWsに聞いてみた。「フジヤマ」「ミヤジマ」…おっ!いいぞ。「ニッポンバシ」…?大阪の電気街、東京で言えば秋葉原である。「おたくの殿堂」、アニメ?マンガ?「イエス、ワンピース。」なるほど。「タコヤキ」「オコノミヤキ」…、「カモン、大阪とちゃうで。」盛り上がってきた。「キョート」「ナラ」…本校生も「温泉」とか「東京タワー(?)」とかいろいろ挙がる。これらとアフリカの「石油…綿花、野生動物・砂浜」の文章を対比させてみる。すると「人間」や「文化」という視点がスイス航空の文章にはないことが解るのである。今日もなかなか盛り上がったのであった。

 ところで、ブルキナの、ゴロンゴロンのマルシェ(週一回の市)で、スイス人父娘と出会った。私と全く同じトゥアレグ族のターバンを巻いていた。(笑)私は、彼らもアフリカに『人間』を見に来ていたように感じた。スイス人の名誉の為あえて『蛇足』しておきたい。

4 件のコメント:

  1. お久しぶりです。昨日は大学で留学生によるプレゼン大会がありました。関西をテーマに留学生中心の中に日本人が混じってチームを構成し発表をしていました。
    あるアメ村をテーマにした発表の結論がアメ村はアメリカ的な場所ではなく、海外の文化を取り入れ日本流にアレンジする日本らしい場所であるというものでした。
    それに対して、留学生から「日本の文化の根底にあるものは何ですか?」という質問が飛んできました。

    困った日本人は結論を繰り返しただけになりましたが、さすがに日本人として猿真似が上手なことが、文化の基礎だという結論はいかがなものかと思いました。
    とは言え、私もそんな質問に対してうまく答えられません。
    スイス人がアフリカのことを知らないのも問題ですが、日本人が日本のことを知らないのも非常にまずいと思うので何か考えるヒントがあれば教えてください。

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  2.  哲平さんへ。久しぶりです。留学生に語る日本文化の根底…私なら、無限大の文化だと答えますねえ。四季が明確で湿潤な気候風土の日本は、古代から稲作文化が栄えたわけで、自然の恵みに感謝しつつ、集団作業に寄る公共社会が形成されてきたといえます。古事記や日本書紀にある八百万の神への信仰や清く明き心が、日本文化の根底にあることは間違いありません。ただ、日本は多層性の文化で授業や仏教を日本風にアレンジして独自の思想を展開してきました。西洋文明も同様に、サルまねではなく、アレンジしていると思います。ただ、それゆえに真理や正義、普遍といった概念が極めてあいまいなものになっているといえますね。だから無限大の文化だと。こんなところでしょうか。(笑)

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  3. 返信ありがとうございます。無限大の文化とは壮大ですね!
    文化が思想から生まれているとすれば、日本人の思想はよくも悪くも首尾一貫してないので文化が多層的になる。なのでそういった拡がりの可能性において無限大の文化なのかもしれませんね。

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  4. 哲平さんのコメントへの蛇足的発展として、今日(17日)のブログを書きました。16日のコメントのネタ本は、森本哲郎と学研の外国人向け日本文化紹介テキスト(JAPAN AS IT IS 日本タテヨコ )です。国際理解教育の観点から、異文化理解を学びつつ、自文化理解を進めるようにいつも考えています。

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