2010年4月25日日曜日

ご姉弟、諺を脱構築する凄み


 昨日のブログの続きである。読者の哲平氏が、このアニメを御存じだとは驚いた。結局、今日も朝早く起きる羽目になり、「ご姉弟物語」を見た。今日の前半の話は、2人がかよう幼稚園で、先生が、諺を元にかるたを作った所から始まる。「長いものにまかれろ」とか「二階から目薬とか」…。姉弟を始め、幼稚園児たちは、この諺をリアルに捉えるのである。すると、長いものにまかれるということは、蛇なんかに羽交い絞めされているイメージとなり、二階から目薬というのは、眼科医が屋根の上から、患者に向かって目薬を投薬するイメージとなる。煙草屋のおばあさんにみんなが教えてもらった「膝が笑う」というのも、膝に口が出来たりしてシュールである。たしかに、これらの諺は、リアルにイメージすると怖い。そして次の日、みんな怯えて絵札を取れなくなるという話なのである。かなり笑えた。最後のオチは、姉弟が新しいバージョン・すなわち怖くない”かるた”を作って、それが幼稚園のオリジナルかるたとなった。メデタシメデタシなのだが、どんな”かるた”なのか、よく聞き取れなかった。残念。
 この「ご姉弟物語」のストーリーは、まさに、デリダの『脱構築』である。広義な意味合いとして、『ある対象を解体し、それらのうち有用な要素を用いて、新たな、別の何かを建設的に再構築すること。』また、『ある対象に隠された、矛盾する(あるいは倒錯している)、無意識下の形而上学を暴き出すための手法。この場合、脱構築された対象は、我々が一般的に認識している観念・概念を揺るがし、覆すものとして現れる。』ということになる。 
 要するに、まず、かるたに使われるような諺を一度解体し、それまでの既成概念を取り去ったのである。幼稚園児という立場が、諺は比喩であるというような既成概念を取り除いたのである。さらに、再構築したのが、リアルな空想である。見事に我々が一般的に認識している諺というものを揺るがしたのである。だから笑えるのである。
 何も、ここまで哲学的に考えなくてもいいのだが、こういう話を倫理の教材として私は使うのである。デリダの脱構築を高校生に説くのはかなり難しい。ロゴス、形而上学、言葉など西洋哲学史の基盤をしっかり理解していないと、ポスト構造主義は説明できない。私は、デリダの脱構築を、いつもソフトバンクのCMで説明している。最初上戸彩の兄が黒人であることからCMが開始された。さらに父が犬であり(彼は「紅の豚」のように変身したことが後でわかる)、母は普通だが、父が勤める学校の校長であることもわかる。どんどんと既成概念を破壊し、再構築されていく。さっき確認でHPを見たら、このファミリーは、白戸と書いて「ホワイト」と読むらしい。この漢字の読みさえも脱構築しているのには笑える。
 このような脱構築の手法は、エンターテーメントや広告業界でよく用いられる。とはいえ、今日の「ご姉弟物語」の脱構築はお見事でした。おそれいりました。

2 件のコメント:

  1. アニメやCMからそのように考えるなんて、
    物事の見方は1つじゃないんだなぁと改めて感じました。

    確かにソフトバンクのCMは異質な世界だけれど、どこか魅了されるものがあります。
    CM大賞を受賞するのもうなずけます。

    来週の日曜日は早起きをしてみようと思います。

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  2. yukimi君へ。コメントありがとう。脱構築の概念を作者が知っていて、ストーリーを考えたのかもしれないし、たまたまかもしれない。でも、哲学って案外面白いものなのだ。ソフトバンクのCMは、おそらく、そういうコンセプトを予め設定したもんだろうなあ。既成概念の破壊を次々出してきたから。

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