2024年11月7日木曜日

聖書学から見た旧約聖書2

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/82041
加藤隆氏の100分de名著「旧約聖書」の書評第2回目。ダビデもなかなかスキャンダラスな話(水浴びをしていた軍人の妻を見初め、夫を最前線に送り戦死させ、妻とし、ソロモンを産ませた。)がある。このへんは、歴代誌とサムエル記の記述が食い違うところで、なかなか興味深い。ソロモン王は、「ソロモンの栄華」という言葉があるくらい、ユーフラテス川からエジプトとの国教まで領土を拡大し、神殿も作り上げている。さらに王妃700人、側室300人との記述(列王記)とあるのは、軍事的だけでなく外交的にも多民族を支配下におさめようという政治的意欲の表れではないかと著者は記している。このソロモンの王権が充実したことと、創世記冒頭のエピソードは、関連しており、賛美ないし批判のたとえ話だと考えるべきだと、著者は記している。

「エデンの園」は、知恵を持つことで、神のようになった人間が出現し、神との断絶が生じた/ソロモン王の知恵による王的支配の批判。「カインとアベル」は、人でありながら、神のように振る舞う者に神が保護を与える(弟殺しの兄カインは、追放されたものの、後に手厚く保護される。)/ソロモン王への賛美。「ノア」の方舟は、神殿を意味し、賛美。「バベルの塔」は、神殿批判。領土拡張による多言語状況の出現で生じる混乱の指摘。ソロモン王の政治のあり方への批判。

…思っても見なかった視点で、実に興味深い。ところで、全くの偶然だと思うが、今日、ある生徒が大学の志願書を見てほしいと持ってきたので、昼休みに少し指導した。そこに、ブリューゲルの「バベルの塔」を見て感激し、西洋史を志したとあった。たしかに歴史に残る名画である。(画像参照)これが、ソロモン王の野心への批判という説があるのだよ、などとは言えなかった次第。(笑)

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