2021年9月25日土曜日

外伝 教材研究(地理編)

系統地理の授業で、アメリカの農業区分は超重要な分野である。アメリカの適地適作は、かなり徹底している。そもそも農業はビジネスであることを体現しており、企業的な経営がなされている。

さて、社会科全体が変わろうとしている。新指導要領の件は先日エントリーしたが、その先駆けとして共通テストが大いに変わった。単に整理して暗記する能力より、資料を分析し、思考することを求められるようになったからだ。

上図は三崎高校で使っている地理のサブノートの演習問題である。①は酪農地帯なのだが、何故ここが酪農地帯なのか。それは、気候、地形と土壌、さらには社会的条件による。このあたりは、ケッペン気候区分で言うとDf(冷帯湿潤気候)で、日本で言えば北海道という感じである。一方、地形は五大湖周辺で、この五大湖は世界的に有名な氷河湖であり、氷食地形で土地は良くない。では社会的条件は何か?私なら、このあたりに移民してきた人々に着目する。こんな資料を見つけた。

https://www.businessinsider.jp/post-801
これは、アメリカ各州におけるそれぞれの年度の最も多い移民の出身国である。字が読めないと意味がないので拡大できることを付け加えておきたい。たとえば、ミネソタ州(MN)は、当初ドイツ系が多いが、スウェーデン系が主流になっていく。北欧は酪農の本場である。土地がやせているのを逆手にとって牧草を育て、乳牛を飼い様々な乳製品を生産する農業ビジネスである。この①の酪農地帯はドイツ系と北欧系がその生業として最も適したものとして確立していったのではないかという仮説が成り立つ。ドイツの約半数はルター派で北欧諸国と同じである。宗教的にも共存しやすいはずだ。

ちなみに、これも南隣のアイオワ州(IA)で研修旅行の付き添い時にホームステイさせてもらったミラー氏はルター派の熱心な信者で教会にも連れて行ってもらった。しかし奥さんは家で屋根の修理をされていた。彼女はアイルランド系でカトリックなんだそうだ。

ところで1990年は、MNのラオスが移民の首位を占めている。私はMNには行ったことがないが、隣のウシスコンシン州(WI)のキング高校に視察に行った時、ラオス人の女生徒と出会った。おそらくは難民として受け入れられたのであろうと思われる。そのWIの州のニックネームは「酪農州」で、州都ミルウォーキーでは、ホルスタイン柄の市バスが走っていた。

2000年以降は、全国的にメキシコ系(FLはキューバ)が移民の首位を占めていたりして、アメリカにおけるヒスパニックの増加が顕著であることもわかる。じっと見ていると様々なことが分かって実に楽しい。

こういう学習をこれからやっていくことになるんだろうなあと思う次第。

0 件のコメント:

コメントを投稿