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さて、サウジの国王が日本にも来て、新ビジョン(ビジョン2030)を打ち出し、協力を求めたとのこと。サウジは、現在極めて厳しい状況に置かれている。原油安に加え、アメリカのイラン承認と、イエメンやイラクでのシーア派の台頭など、内憂外患に苦しんでいるからだ。
新ビジョンでは、1.石油依存度の低下 2.産業発展による雇用の創出 3.メッカ小巡礼の呼び込みによる観光業の発展 4.物流拠点整備 5.経済特区設置による海外からの直接投資 6.国民の技術教育・職業訓練の強化が謳われているようだ。
…開発経済学の観点から、このビジョンは至極まっとうなモノだと思われる。当然名のある専門家が策定したのであろう。日本が関われるとすれば、まず投資の増大、物流拠点や観光業に関わる交通インフラの整備、理系教育の受け入れなどであろうが、その実行にあたっては、日本でも強い懸念が示されている。
…マレーシアにある私は、その強い懸念に共感せざるを得ない。マレーシアは、いち早く東アジアの経済発展に乗って飛翔した。しかも、商工業などのビジネスに長けた中国系・インド系の人々がいた。政治的には様々な問題はあるが、彼らの存在は経済的には極めて大きい。ムスリムのマレー系の人々について、マハティール首相(当時)は、ブミプトラ政策を推進しつつも、中国系・インド系との差を深く認識していたようだ。(今読んでいる「マハティールのジレンマ」にも出てくる。)
…いささか遅きの感があるサウジのビジョンは、そういう認識がかなり欠如しているように思われる。UAEなどでも、外国人労働者に頼った開発政策が推し進められた。いわば砂上の楼閣のような開発で、かなり危なっかしい開発だと私は思う。私はサウジに行ったことはないが、サウジの(妻の言う)土地の持つエネルギーはいかほどのモノなのだろう。大臣の執務時間が1時間という国で果たして、そういう開発が可能なのだろうか。たとえトップが超優秀であっても、中間ならびに下部の人材が不足していては、ガバナンスは良くならない。
…マレーシアの土地のもつエネルギーとは、まだまだ貧しい人も多いけれど、外国人労働者も含めて、豊かになりたいという人々の心のエネルギーの総体ことだと思う。それを牽引しているのは、やはり中国系やインド系の人々であるし、マレー系の中にも彼らに感化され経済的地位向上に立ち上がった人々がいる。それに対し、日本は成熟した先進国である。そういう豊かさをひたすら追求するエネルギーは、すでに過去のものになったのかもしれない。さてさて、サウジには、そういうエネルギーは、これまでが豊かすぎて全くないのではないか。この新ビジョン、その実効性については、そういう意味で、どうしても疑問符がついてしまうのだ。
<東洋経済オンライン>http://toyokeizai.net/articles/-/164673
今日のポーランドボールの画像は、英検を受けるサウジのハナシ。私の今日のエントリーとも関係が指摘できます。よければ是非ご覧下さい。
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