日経のグローバル・オピニオン、今日は米ユーラシアグループ(調査会社)社長のイアン・ブレマー氏であった。なかなか面白い視点だったので、昨日の体調不良で抜けた分を取り戻してエントリーしておきたい。以下私なりの要約。
2016年最大のリスクは、弱まる米欧同盟である。新興国の影響力が拡大していること、米国民がイラク・アフガンなどの長期の戦争によって海外での新たなコストやリスクを引き受ける意思をなくしていること、こうした変化が米欧同盟に楔を打ち込んでいる。欧州は深刻な宿題を数多く抱え注意がそれてしまっている。(…実に面白いレトリックだ。)欧州は分裂し、脆弱で臆病になっている。その結果、各国は、米国ではなく、他の政府に頼ることで問題に対処しようとしている。
英国は、21世紀も経済大国に留まる方法を模索する中でEUにおける同国の将来が不確かなこともあって、中国のご機嫌取りをする経済的動機をもつ。(…これも面白いレトリックだ。)米国の反対を押し切ってAIBBに参加し、中国の人権問題や安全保障、香港の民主主義さえもさほど気にかけない。
フランスは、ロシアに目を向ける安全保障上の動機がある。ロシアはシリアのアサド大統領を支援している。これによって、ISが壊滅し、欧州への難民流入に歯止めがかかることを期待している。パリ同時テロの後、フランスはNATOではなく、EUに集団的自衛権の行使を求めた。(フランスは、ドゴール時代にNATOを脱退したが、サルコジ時代に復帰している。)NATOに頼れば、ロシアとの積極的な協力はできなかっただろう。
ドイツにはトルコと協力する政治的動機がある。メルケル首相は難民の波が洪水にならない限り、難民への門戸開放政策は機能することを理解している。だから、欧州に押し寄せる難民の門番としてのトルコの役割を重視している。だからこそ、トルコのEU加盟交渉再開、トルコ人のビザなし渡航を検討すると提案した。
米国と欧州の分裂が明確に露呈するのはウクライナとシリアである。米国は高みの見物よろしく原則に固執するだろう、しかしまともに影響を受ける欧州は現実路線をとることになる。この米欧同名の空洞化は、さらに進み経済的現実が政治的現実を踏みにじるだろう。様々な欠陥や限界があっても、民主主義、表現の自由、法の支配の推進に寄与してきた米欧同盟にとっては損失である。
…英中・仏露・独土。なかなか面白い視点であった。さすが、「Gゼロ後の世界」の著者である。ところで、ブルキナのテロについて、専門家の荒熊さんがブログで詳しく論じておられるので紹介したい。http://cacaochemise.blogspot.jp/2016/01/1.html
2016年1月18日月曜日
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