2015年1月27日火曜日

朝日 常岡浩介氏の「異見」

常岡氏がアフガンで拘束された時の本より
昨日の朝日新聞に、今回のイスラム国の事件についてジャーナリスト・常岡氏へのインタヴューが掲載されていた。特に重要だと思う部分を中心にそのまま引用しておきたい。

安倍晋三首相の勇ましい言葉が、今回の事件の一因になったと私は考えています。17日に訪問先のエジプトで、「イスラム国」への対応として難民支援などに総額2億ドルの無償資金協力を行うことを発表したときです。
これ自体は民生支援であり、人道的ないい内容だと思うんですよ。ところが、首相は演説で「ISIL(イスラム国の別称)と闘う周辺諸国を支援する。」とうたい上げた。イラクの英字メディアも、そこを見出しにとりました。
すでに日本人の人質をとっていた「イスラム国」は、きっと手ぐすね引いて身代金を要求する機会をうかがっていたはずです。そのさなかに、敵対的な言葉が首相の口から飛び出した。思慮の足りない、浅はかな言動だったと思います。
そもそも湯川遥菜さんが拘束されたのは昨年8月でした。後藤健二さんの誘拐情報も昨年11月には政府が把握していたのは間違いない。今回ネットで2人の映像が公開されると、政府は慌てて現地対策本部を立ち上げましたが、ではこの間、いったい何をしていたのでしょうか。私には貴重な時間を無駄にしていたように思えてなりません。
私は昨年9月、「イスラム国」が支配するラッカに入りました。拘束された湯川さんの裁判に立ち会うよう「イスラム国」側から求められたためです。実は湯川さんはイスラム教に改宗しており、そのほか有利な交渉材料もあったのに、言葉の問題もあって伝わっていなかった。和や市は現地できちんと説明すれば解放の可能性はある、と思っていました。
あいにく裁判は延期になり、いったん帰国して再び現地入りしようとした。その矢先に、私は警視庁の家宅捜索を受けたのです。北海道大学の学生が「イスラム国」の戦闘に加わろうとしたとして、私戦予備・陰謀の疑いで事情聴取された際です。パソコンや携帯など62点を押収され、「イスラム国」との連絡もできなくなってしまいました。
あの邪魔さえなければ、湯川さんを救えたかもしれない。そうすれば後藤さんも無理して現地入りする必要がなかった。その可能性を思うと本当に悔しく、腹立たしくてなりません。
北大生を紹介されたのは、その2か月も前でした。同行取材することになったのですが、海外旅行をしたこともなく、イスラムへの関心も見られず、本当は現実逃避型で現地に行く意思はないんだなと思った。案の定、8月の出発直前にキャンセルになりました。
そんな若者であることは、警察も重々承知していたはずなんです。何度も接触していましたから。ところが公安は、まるで「イスラム国」のリクルートの手が日本にも伸びているかのような「事件」にして発表した。これが欺瞞だったのは、北大生も含め一人も、いまだに送検すらされていないのを見れば明らかでしょう。国際テロを担当する外事3課は5年前、内部情報の大量流出事件を起こして醜態をさらした。何とか存在意義を示したかったのでしょう。(以下略)

…常岡さんは、この後日本での反イスラム感情が広がることを恐れていると語り、不要なリスクをつくりださないこと、武器輸出も進める安倍首相の「積極的平和主義」が今後具体化し、平和国家ニッポンのイメージが失われた時、そのリスクを背負わされるのが海外で働くNGOであり、観光客であり、国民だと主張する。中東の親日感情は強く、これを壊してはいけないと結んでいる。

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