とりあえず、冬季休業中から取りかかってきた「高校生のためのアフリカ開発経済学テキストV6.01」を脱稿した。もちろん、これから推敲作業に入るのだが、とりあえずほっとしたところである。新テキストについては何度かエントリーしてきた。脱稿に際して、第3の視点・アフリカを文化人類学的視点から見る-アフリカの知の章について書いておこうと思う。
いろいろ考えたのだが、まず、以前から教材として使っているスイス航空の宣伝コピーから入ることにした。
スイス航空は、なぜアフリカの十七か国へ飛んでいるのでしょう。それは、ここには石油、金、ダイヤモンド、銅、鉄、プラチナ、木材、ココア、ナッツ、ゴム、タバコ、スパイス、果物、コーヒー、綿花、それに珍しい動物やすばらしい砂浜があるからなのです。(デア・シュピーゲル誌の広告1972年9月/アフリカの選択:マイケル・B・ブラウンからの引用)
生徒には、この広告の意味を問いたい。もし、日本の航空会社ならどう日本に行く意味をどう描くかから考えさせる。すると、よくわかるのだ。見事に、人間や文化という視点が欠けている、ということが…。
(1)は、アフリカから学ぶ、である。峯陽一先生の「アフリカから学ぶ」という同タイトルの著作から、次の言葉を生徒に送ることにした。「アフリカが好きな人は、アフリカを一方的に変えようとはしないし、アフリカを利用して自分だけが利益をあげようともしない。むしろ自分が出会ったアフリカとの関係を大切にしながら、アフリカ人に自分の感じたことを伝え、変化するアフリカに寄り添い、アフリカの経験から学び、自分の生き方を反省していくはずだ。その結果自分の価値観が大きく変わってしまうこともある。」
(2)は、「京大アフリカ地域研究資料センター・公開講座での学びを中心に」と題した。様々な著作からの引用をもと文化人類学的な視点を構成することも考えたが、結局のところ、京大の先生方の著作が主となる。ならば、これまでの毎回の公開講座ごとに「学び」をこのブログで整理してきた研鑽の成果を、このテキスト上でカタチにするのもいいかと考えたのだ。多くの講座で学んできたが、およそ、次のように再構成した。
①アフリカの脆弱性を乗り越える知
島田周平先生のアフリカ地域研究の総論的な内容。
②アフリカ遊牧民の知
太田至先生・佐川徹先生の遊牧民研究の成果を中心に。
③アフリカ農耕民の知
掛谷誠先生・大山修一先生・近藤史先生の研究成果を中心に。
④アフリカの構造的知 情の経済と呪術
平野美佐先生・関西外大の近藤英俊先生の研究成果を中心に。
⑤アフリカ学・「伝統」と「開発」の二律背反
梶茂樹先生と金子守江先生の研究成果をもとに、文化人類学的視点と社会科学が目指すアフリカの開発の視点の問題点を探る内容。今回のテキストの3つの視点の意味を明らかにする趣旨を含む。
⑥アフリカの潜在力・在来知
太田至先生とZAIRAICHI掲載の神代ちひろさんの研究内容、ならびに松田素二先生のアフリカの潜在力の特性の定義をもとに、京大が目指す地域研究からアフリカの社会科学を見直す取り組みを。
最後に「まとめ」として、ブルキナファソで知り合ったIさんの詩を載せた。学びを終えて、生徒諸君はこの詩から何を想起するかと問いかけた。アマルティア・センか?HDIか?インフォーマルセクターか?あるいはアフリカの人々の生き方か?そこに、このテキストの「理想」を問いたいと思う。
参考文献・関連図書一覧(130冊)と、最後のアフリカ地図を含めて、全72Pとなった。
2015年1月11日日曜日
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