NPO法人アフリック・アフリカのアフリカ理解講座に、妻と行ってきた。先日(12月3日付ブログ参照)少し書いたように、京大のアフリカ地域研究資料センターの若手研究者が中心になって設立されたNPOである。場所は京都駅ビルにある京都府国際交流センターである。
テーマは、『アフリカのパパ・ママから学ぶ』というアフリカの子育て論だった。さすが、お母さんが多い。聴衆の中で男性は私を含めて3人(?)だった。
講師は、3人。ヒビテ・テスファイエさんというエチオピア人ジャーナリストの女性。高田明さん(京大アフリカ地域研究資料センター准教授)。それに西崎伸子さん(福島大学准教授:京大アフリカ地域研究資料センター出身)。
アフリカに学ぶ子育て…3人のお話をまとめてみると、要するに、親族や近所で、小さい子供が、年長の子供に自然に育てられる社会構造がある、ということだろうか。日本の都市部ではほぼ崩壊している構造である。
ヒビテさんは、夫の仕事の関係で日本に滞在していると伺ったので、おそらくアフリカ1(マーケティングでいう所得階層のトップ)に属する女性なのだろう。エチオピアの地方都市出身と伺ったが、およそ驚くような話ではなかった。実は、私はエチオピアの事はあまりよく知らない。サブ・サハラ=アフリカの国の中でも単性論のエチオピア正教で、使用言語もアムハラ語。私は、エチオピアにもアフリカ的一夫多妻制があるのか、興味があったのだがそういう話は出なかった。だた育児のサポートで、お姉ちゃんや祖母、叔母、あるいはお手伝いさんのサポートがあるとのこと。「?」お手伝いさん?まあ、アフリカ1ならありうるかと思った。だから、正直なところ、なんとなくしっくりこなかったのだった。
高田さんの話は、ナミビアのクン(いわゆるブッシュマンと呼ばれる人々に属する民族グループの1つ)では、極めて密接な母子関係の後、子供集団の中で社会性や狩猟採集民族としてのスキルを得るという話や、乳児を立位で保持することで、運動能力を高めるとの話もされた。なかなか面白かった。
西崎さんは、現在福島大学で教えておられる。震災とt問題の中、小学生の娘さんをこの夏、保養(被曝線量を減らすために、有効だそうだ。)ということで調査がてらボツワナに連れて行ったそうだ。すると、サンというこれもブッシュマンと呼ばれる人々に属する民族グループの1つだが、その子供たちが、うまく集団に誘いれてくれた体験を話された。社会が子供を育てるというアフリカの構造は、今放射線龍に悩む福島から見れば、素晴らしいと感じるとも。今回の震災で、国や行政は有効な手が打てていない。結局自分たちでネットワークをつくるしかないと。
開発が進み、近代化し、ガバナンスが良くなり、民主主義が成熟し、豊かになるということが、子供を育てにくくしているのではないか。私はそんな事を考えてしまう。エチオピアでもナミビアでもボツワナでも、おそらく地域コミュニティにおける各家庭の価値観は大差ないはずである。エチオピアでは正教的な価値観と民族的な道徳観は確固としたものであろうし、クンやサンの村でも確固とした社会観や道徳観があるはずである。
それに対して、日本は乳児や幼児の死亡率はアフリカよりはるかに低いが、もっと病的な幼児虐待などが社会問題化しているように特に都市部での地域的連帯は崩壊しつつあり、各家庭の価値観も道徳観もバラバラである。こんな日本で、社会が子供を育てるというのはかなり困難になりつつあるといっていいだろう。西崎さんの実体験に裏打ちされた、子育てのネットワークづくりの必要性は、その社会構造の再生という意味合いをもつ。
ヒビテさんは、エチオピアでは、父親が最近子育てに参加していると誇らしげに紹介した。伝統的な子育て方式が変化し始めている。たしかにジェンダーという面からは良いことなのだろうが、私は決して手放しで喜べない話であると思う。グローバリゼーションはこんなところにも顔を出す。
2011年12月10日土曜日
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