2011年5月28日土曜日

京大 アフリカ研公開講座 5月

鴨川ぞいの新緑から京大稲森財団記念館を望む
雨の中、京大の公開講座に行ってきた。今日のテーマは荒木茂先生の「土に生きる」である。荒木先生のプロフィールを見ると、私の予想どおり農学博士であった。現在は、①アフリカの生態環境と生業の関わりを、生態学、土壌学、農学的な視点を明らかにし、その成果を地域の歴史的文脈の中に位置づける。②世界の地域は自然史と人類史の結合から成り立っているという観点から、学問の融合をはかる(『仮想的地球』モデル)。③アフリカ熱帯林の保全と農業が両立する可能性を追求すべく、実践的な地域研究を開始している。とあった。

荒木先生は、講座の最初に、『土壌』というものについての基礎的な知識の伝授をされた。私は地理の教師でもあるから、ラトソルとかチェルノーゼムとかポドゾルとかいった土壌の名前と分布が頭に浮かぶが、そもそも「土とは何か」といった地学的なことは苦手である。
先生は、その中で面白い理論を教えてくださった。E・ラブロックの『ガイア理論(地球生命圏)』である。地球は1つの生命体であり、土とは、動植物や細菌ら生命が生きるために形成する仕組みであるというのだ。もちろん、それ以前の腐植栄養説や無機栄養説などにも触れられたが、これらを統一的に見る立場(ガイア理論)を是とされているようである。その説明で、地球上のCOは、その生誕以来減少しており、地球自体が生命圏を守るため温暖化ガスの衣を脱ぎ捨ててきた歴史である。低COでも光合成可能な植物(トウモロコシ等)が出現し、酸素も藍藻が海中で光合成をはじめ、海水中のイオンを酸化し続け、鉄分と融合し酸化鉄として海底に沈殿(実物を拝見した。)して以後、大気に酸素が浮遊されるようになったとのこと。へー。こういう事は私は全くの無学なので率直に驚いた。この辺は、荒木先生のプロフィールにある②の視点である。

チテメネの焼き畑(ザンビア)
さて、講座の中心になった話は、ザンビア北部のムビカ県にある『チテメネ』と呼ばれる焼き畑の生態学の話である。この『チテメネ』というベンバ人の焼き畑は、少し変わっている。ミオンボという木の林を伐採し、その中央に木や枝、葉っぱなどを集め燃やすのである。ある意味集約的(手がかかるという意味)である。しかしながら、タンザニアのランダムな焼き畑の方法(伐採したものをわざわざ中央に集めない一般的な方法)と対比すると、次のような収穫量となる。収穫物はシコクビエ(ミレット)である。
タンザニアのブッシュ焼き畑:灰のスポット部分1.56t、灰のない部分1,21t
タンザニアのミオンボ焼き畑:灰のスポット部分3.39t、灰のない部分1.51t
ザンビアのチテメネの焼き畑:灰のスポット部分3.57t、灰のない部分0t
ザンビアの退化したチテメネの焼き畑:スポット部分2.14t、灰のない部分0t
結局、灰を中央に集めてもそう意味がないようである。反対に灰のない部分は全く取れない。なにしてんねん、チテメネ!と宮田珠巳風(5月25日付ブログ参照)に言ってしまいそうな結果だ。ザンビアとタンザニアの土壌を比較してみると、炭素含有%、窒素含有%、カルシウム、マグネシウム、カリ、硫黄などの含有%も大差がない。若干違うのがザンビアのチテメネの方が、サラサラした黄色砂質土壌で、タンザニアの方が粘土が多い赤色粘質土壌だということらしい。この辺り、完全なる文系の私にはなかなか難しかった。こういう生態学は、荒木先生のプロフィールでいう①の視点かと思われる。

本当は、③について、カメルーンの研究成果を熱く語られる予定だったと思うのだが、時間切れであった。いつものように飲み物付きの休憩、質問を書いて提出する時間になった。私は、チテメネの焼き畑が、3年間輪作されることに驚いた。ミレット→落花生→キャッサバという順らしい。自給農業なので、あまり商品価値は問題にならないと思われる。ハタと気付いた。根っこの深さである。徐々に根っこが下まで延びる作物順である。で、質問用紙にそういう理解でよろしいかと書いて提出した。荒木先生の答えは、一言。是であった。まあ、どうでもよいような質問である。(笑)

さて、ブルキナ研究のEさんは無事帰国されて、実家におられるそうだ。スタッフのお嬢さんからそう伺った。ちょっとホッとしたのであった。
ところで、明日は、荒木先生のプロフィールにあった②の『仮想地球モデル』について書くつもりである。会場の後ろに、無料配布のコーナーがあり、『仮想地球の試み』というA4版で200ページにも及ぶ冊子が置いてあったのだった。私は『仮想世界ゲーム』の使徒である。(ラベルの仮想世界ゲーム参照)『仮想地球』?興味を持たないわけがないではないか。

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