今回の本は、ジェットコースターの話である。”タマキング”の頃から、彼がジェットコースター評論家として、いろいろ書いていたので、その集大成的な本である。彼のレトリックを引用する前に、こんな思い出話もある。数年前、JICAの高校生セミナーに参加していた時の夜のことである。自室のテレビでBSを見ていた。(恥ずかしながら私の家にはBSは入らない。)NHKだったと思うが、”世界のシェットコースターベスト10”だったか、そんな内容の番組だった。これが案外面白くて、ベスト10中、アメリカのカリフォルニア州、フロリダ州を押さえて、オハイオ州に凄いマシンがあることを知った。意外だが、オハイオ州こそ、ジェットコースター乗りの聖地なのだ。この本にもこの3つの州を中心に、日本も含め、様々な絶叫マシンに乗った話がこれでもかというほど書かれている。
では、宮田珠巳らしいレトリックをいくつか引用してみようと思う。
宮田氏の迷作「旅の理不尽」 |
『ジェットコースターが好きである。ジェットコースターなんか子供の乗り物だと思っていtが、30台後半になった今、依然として乗りたい。…(中略)…なかには呆れ顔で「いい年してなんの話をしてるんだ」などと尋ねる人もあったが、答えは、ジェットコースターの話をしている、が正解である。…(中略)…そんなわけでこれからジェットコースターの本を書こうと思う。これは、私が東にスゴいジェットコースターがあれば行って乗り、西に珍しいマシンがあればそれも乗り、南で怖がっている人があれば行って乗せ、北につまらないマシンがあってもそれにも乗り、とにかくあれこれもやたら乗り、その魅力を解剖したり考察したり、あー面白かったりした思索と行動の記録である。』
ナガシマ・スパーランドに完成した「スチールドラゴン2000」の試乗会の話。雑誌の取材で優先乗車することになって…。
『私はこれまで、ろくに優先された記憶がない。株主優待とか、学費免除とか、シード権とか、VIP席とか、顔パスとか、それどころか新幹線のグリーン車だって乗ったことはない。…(中略)…だが晴れてこのたび優先である。つに栄光は訪れた。これまで報道関係者というと、なんとなく傲慢というか、無礼というか、遺族にマイク向けるなよ、かわいそうだぞコラ! 人の迷惑考えろ、と思っていたけれども、今こうして優先側の身分になってみると、自分という人間は、最初から一般庶民と何かが違っているような、そんな感慨を得ることができた。ようやく自分がいるべきところにいる、そんな実感がある。ナガシマスパーランドに向かう名古屋行きの新幹線内で、トイレに行って戻ってくると、みんな私のほうを向いて整然と座っていたので、思わず「いや、ご苦労」と手をあげそうになったほどだ…(中略)偉大なる私は、こうしてさんざん世界一(注:スチールドラゴン2000がギネス記録を更新した)を堪能し、記念のTシャツまでもらって、最後は新幹線の普通車に乗って東京に凱旋した。』
宮田氏オススメの「ニトロ」(ペンシルベニア州) |
カリフォルニア州ナッツベリーファームの急流すべり”ペリラス・ブランジ”に乗った話。豪快な乗りごごちに同伴の西島君が「アホちゃいますか、アメリカ人」とさっそく”アメリカ人アホ説”を提唱した、後の部分である。
『興味深い説ではあるが、そこまで言っては身もふたもなので、もう少し科学的に考えて、あたりにポンチョなどの防水着を貸す気配がまったくなかったことから、アメリカ人は水をはじく、というのが私の仮説である。「ゴーストライダー」には乗れなかった(注:運行停止だった)ものの、こんな無謀な乗り物に乗れたのは幸運であった。』
サンフランシスコのマリンワールドで「メドゥーサ」に乗った後の話。アメリカのコースターは、スイス製だったりオランダ製であることを聞いて…。
『つまりジェットコースターはヨーロッパがつくり、アメリカ人が乗るという構図になっているらしい。なぜかはわからんがそうなっているらしい。アメリカ人めっちゃ漁夫の利。いや漁夫の利は少し違うな、他人のふんどしである。他人のふんどしでジェットコースター大国になっている。』
宮田氏が選んだ世界No1 ミレニアム・フォース(オハイオ州) |
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