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地理を面白く感じる1つは、ケッペンの気候区分と農業の関連性だと私は思う。地理という教科は法則性を解き明かしていく、ちょっと理系なところがいい。小麦・米・トウモロコシといった穀物でも農学的にかなりの違いがある。この本は地理的な視点をメインに、家庭科的な要素もあって面白い。
さて、まず小麦の分類である。まずは、生産方法で、冬小麦と春小麦に分かれる。これは教科書でもよく出ている。もともと小麦は「越年生」(畑で冬を越す)の作物であるので、生育期間が長く収穫量が多い冬小麦が主流。春小麦は越年できない積雪や土が凍ったりする地域で栽培される。生育期間が短いので収穫量は少ないが、グルテン(グルテニンとグルアジンという2種のタンパク質で水を加えてこねることで絡み合ってできる成分のこと。弾力や粘り気を与え生地の伸びをよくすることがで様々な食感を生み出す)を多く含むのでパンの材料として優れているという特徴がある。次に外皮の色では、赤色小麦と白色小麦に分類できる。用途で分類すると、硬さとたんばく質の量が多い順に、強力粉、中力粉、薄力粉となる。日本が輸入している小麦でこれらをまとめると次のようになる。
①硬質赤色春小麦(1CW・DNS:カナダとアメリカ産の春小麦で強力粉でパンに使用)②硬質赤色冬小麦(HRW:アメリカ産の冬小麦で準強力粉、中華麺や餃子の皮に使用)③中間質白色冬小麦(ASW:オーストラリア産の中力粉でうどんに使用)④軟質白色冬小麦(WW:アメリカ産の薄力粉で、ケーキ、天ぷら粉、和菓子などに使用)となる。すでに法則性が見て取れる。こういうのが面白い。
このうち、オーストラリアのASW(オーストラリア・スタンダード・ホワイト)は、西オーストラリア州のパースに行った時、広大な畑を目にし、ほとんどが品種改良を重ね、日本のうどんに使われると教えてもらった。
これら普通小麦に対し、もっと硬質で、粒が非常に硬く柔軟で弾力性の強いグルテンを含んでいる「デュラム小麦」がある。パスタに加工される地中海沿岸産の小麦である。カナダのサチュカスワン州を中心に、一部マニトバ州やアルバータ州でも生産されていることを初めて知った。余談だが、カナダといえば春小麦だが、オンタリオ州の南部、ミネソタ州の対岸では冬小麦が生産されているそうだ。一方、アメリカは冬小麦地帯が広がる。サウスダコタ州南部からネブラスカ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州中央部までと、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州、オハイオ州といった五大湖周辺、それにワシントン州でも一部生産されている。春小麦は、当然北部でモンタナ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州北部、アイダホ州の一部といった地域である。日本向けの小麦はモンタナ州が主産地らしい。
世界的に視野を広げると、冬小麦の最大の産地は黒海に面したロシアとウクライナ。ロシアの西シベリア経済特区ならびにカザフスタンでは春小麦が生産されている。インド、中国(華北平原の冬小麦、黒竜江省の春小麦)も生産量は多いが輸出額は人口の関係で、EU諸国+イギリスより少ない。このあたりは、今まで教えてきた内容なので、ここまで。(笑)いやいや、笑い事ではない。ウクライナ紛争が、どえらい影響を特にアフリカ諸国に与えていることを授業では語気強く語らねばならない。
最後に日本の小麦生産だが、自給率は15%くらい。もちろん北海道が主産地で、うどん用の「きたほなみ」、パン・中華麺用の「ゆめちから」などを国内産シェア57%くらい生産している。意外だが、それに続くのが福岡や佐賀である。小麦の輸入港では、神戸、千葉、博多などと、大消費地近くの取り扱いが多い。面白いのは、香川県の坂出が、オーストラリアのASWに特化した港であることだ。授業で、その理由を質問しようかな。(笑)
ところで、日本の小麦の輸出入に関しては、米とともに「国家貿易」(特定の農産物を政府が独占的に輸出入する)をなっており、農水省が必要量をまとめて購入、政府売り渡し価格で製粉会社に販売することになっているそうだ。2007年以後は、相場連動性に移行した。政府売り渡し価格には、輸入価格(買付価格+港湾諸経費)にマークアップ(政府管理運営費・国産小麦の生産振興対策費用)を加えたもので、4月と10月の年2回価格改定がおこなわれるとのことである。これは知らなんだ。
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