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世界には、元気なところと元気がないところがある。21世紀のアフリカは前者、日本はどちらかといえば後者に属していると峯先生は感じていると記されている。アフリカのGDPは、1970年代末から1990年代末まで、全く成長しなかった。冷戦後には、ソマリア、リベリア、シエラレオネ、ルワンダなどで流血の紛争が起きた。先進国の援助疲れもあった。20世紀末の20年間にアフリカは貧しく争い事の絶えない大陸だというイメージが世界中に定着した。ところが、21世紀最初の十数年間、アフリカ諸国は全体的に経済規模を拡大させ、年5%ほどの経済成長を記録する。中国を始めとするアジア新興国の旺盛な資源需要という要素が大きいが、アフリカに資金が流入するようになり、アパルトヘイトから脱した南アが地域経済に深く関与するようになったという要素もある。ただし、2015年にバブルが弾けた。一般的に、資源価格の低下はアフリカの石油輸出国の所得を押し下げるのでGDPが落ち込むが、非産油国にはプラスになる。アフリカの底力が試される時代になったと言えるかもしれない。
アフリカで、お金が回り始めたという変化が、未来にとって歓迎すべきかどうかは、まだよくわからない。携帯電話やスマホが農村にまで普及し、大小の店の品揃えが豊富になってきた。自動車が増え、都市では新車もよく見かけるようになった。日本より遥かに進んだモバイルマネー(M-pesaなど)を庶民が日常的に使うようになった。幹線道路では、トラック輸送などの物流が明らかに活発化してきた。アフリカの好況は、アジア経済が全体として成長している限りは続きそうである。
アフリカ社会は、貧しいが平等で分かち合いの規範があるとされてきたが、これは反対に豊かなものへのたかりの対象となっている。このような社会ではイノベーションが生まれず、経済は停滞し、貧困からの脱却もできないと言われてきた。しかし、こうしたアフリカ社会の枠組みが激しく揺さぶられている状況である。ジニ係数(完全平等が0,完全不平等が1というデザイン)で見ると、米中で0.4、ヨーロッパで0.3~0.4程度、アフリカでは、ギニアが0.30、ナイジェリアで0.35、タンザニアで0.41、ブルキナファソで0.47、アンゴラ0.51など(2018年)となっている。南部アフリカの数字はラテナメリカ諸国と同じくらいの水準で、HDIの最も低い地域は、いまだサブサハラ諸国である。また、最も豊かな10%の市民の所得の総額が、貧しい方の50%の何倍かを示した所得格差の数値では、日本は13倍、ナイジェリアは14倍、モロッコが18倍、インドネシアは19倍、インドは22倍、ブラジルが29倍、南アは63倍となっている。南は極端だが、中部から南部アフリカの国々はすべて20倍を超えている。
アフリカの農村は自給農業が主で、基本的に貨幣所得は発生しないが、現在のアフリカではインフォーマル経済の海に浮かぶフォーマル経済が輸出部門を中心に大量の富を稼ぎ出している。この富の一部は身内に分け与えられたり、バブル的な投機や消費に向かうのだが、インフォーマルな経済活動は補足されないので、統計には表れてこないゆえに所得の不平等はやや誇張されていると考えることもできる。
…インフォーマル経済の海に浮かぶフォーマル経済、まさに言い当てて妙である。これは現地でよく実感できるところだ。 …つづく。
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