2022年8月3日水曜日

長英逃亡(上) 吉村昭 


三崎にいる時、西予市の高野長英の隠れ家という場所を訪れたことがある。高野長英といえば、蛮社の獄である。今ハマっている吉村昭の歴史小説の中に、この高野長英の上下巻があるのを知り、アマゾンで中古文庫本を手に入れたのは、だいぶ前になる。読み始めてから、他の本も併読してきたので、書評がだいぶ遅くなった。今日やっと上巻を読み終えた。

私が高野長英について知っていたのは、蛮社の獄で入牢した後、火事の際逃亡したことと、まだ上巻では出て来ないが、とんでもないことをして顔を変えたことである。今日のエントリーでは、この牢の火事について記しておこうと思う。吉村昭の小説は、かなり資料を精査して書かれているので、フィクションではあるが、事実に近いはずだ。驚いたのは、長英は牢名主になっていたことである。まあ、医者であるし、牢内での人望もあったようで、よく時代劇などにある畳を重ねた上に威張って座っているイメージの牢名主になっていたということが凄い。で、彼は、蛮社の獄で蘭学を忌み嫌っていた江戸町奉行にハメられ、絶望している中で、放火を外部の若者に依頼する。3日間の猶予を与えられ、娑婆に出た彼は、戻る気などなく、逃亡するわけだ。

上巻は、そういった顛末が書かれているが、かなりサスペンスに満ちている。長英を助ける蘭学者や牢内で恩を感じた任侠の徒などに助けられながら、江戸に戻ってきたところである。長英は、牢生活を嫌悪していた故に逃亡したが、佐久間象山よろしく日本の海防のため役に立ちたいという信念を忘れない故である。さて、これ以後どうなるのか。おそらくは通勤時に読み続けると思うので、下巻のエントリーは少し間があくがご容赦願いたい。

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