さて、昨日のブログで、世界価値観調査をもとにした教材で、伝統的価値観(宗教の相違)のみでは考察しがたい部分もあるので教材を考えたいと書いた。地理総合では歴史的背景から見る地理(時間軸から空間軸を見る)の内容が挿入されている。これを、ラテンアメリカとアフリカを対比させることでやってみることにした。ラテンアメリカへのスペイン人の征服による虐殺・病原菌による原住民の大量死は、アフリカの奴隷貿易と大きく関連している。(9月17日付ブログ参照)世界史で習う(大西洋の)三角貿易というやつだ。
上記画像(世界価値観調査)は、伝統的価値観が強いというグラフの下部だけを抜粋したものである。横軸の中央・0より左の-の数値は経済的にきびしい状況の国々で、右の+の数値は、経済的に余裕もあり様々な価値観をもてる国々という意味である。ラテンアメリカはおよそ右側に位置するが、アフリカは左である。すなわち、ラテンアメリカ諸国は、アフリカに比べ、ある程度裕福だと見て取れる。それはどういう理由によるのだろうか。
実は、極めて簡単な理由である。ラテンアメリカが独立を果たしていくウィーン条約の頃、支配階級(大地主・農園管理者・貿易商人ら)であった初期に移住してきた白人と、植民地生れの白人が独立運動を展開し、以後白人との混血をも交えてずっと支配層であり続け、後にアメリカのモンロー条約で守られながら、現地人や奴隷だったアフリカ系との経済格差を維持しつつ、今日を迎えているからである。(労働需要が大きい)砂糖などのプランテーションが発達しなかったアルゼンチンやウルグアイでは、白人移民を多く受け入れた経緯もあり、白人比率がかなり高く、白人の国だといってもいい。
それに対して、アフリカは、白人に搾取するだけされて、1960年代に独立を勝ち取ってからもなかなか飛翔できなかった。ちなみに、ラテンアメリカで意外に早く独立したハイチは、フランス革命後期時のジャコバン党などの後押しで生まれた黒人国家である。現状は実に厳しいが…。
この差は、私はアフリカ開発経済学の見地から、各政府(または植民地)の教育政策が大きく関わっていると思う。イギリスは、現地エリートの一部を留学させ、その後の傀儡・手駒に使うという戦略を取った。宗教団体が学校を作った例はあるが、一般現地人には、基本教育は施さない。フランスは、直接統治が基本なので、もっとえげつなく教育政策などないに等しい。ラテンアメリカでは白人の大地主が支配していたので、支配層に有利とはいえ、それなりの教育政策をとっただろうと思われる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E9%96%93% E9%96%8B%E7%99%BA%E6%8C%87%E6%95%B0 |
これは、ロックやヒューム、カントが言うような人種的な問題ではない。これまでのヨーロッパ諸国が搾取し、本来の社会構造を破壊してきた歴史(=構造的暴力)が理由である。
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