2024年8月11日日曜日

トルーマンのイスラエル承認

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 F・ルーズベルトの生涯については、大森実の本などで詳しく読んだが、(大統領史上初の)3選後、死去した彼の職を継いだ副大統領トルーマン(画像参照:20¢切手)については、あまり詳しくない。日本にとっては、スターリン、チャーチルに舐められて原爆を落とす決断をした男であるわけだが、そのトルーマンが、イスラエルが独立宣言をした「11分後」に国家承認した話が、「聖書の同盟」(船津靖/KAWADE夢新書)に出てくる。

トルーマンは、ミズーリ州出身・高卒の庶民派で、子供の頃は長老派の日曜学校、就労したカンザスシティではバプティストの教会に移っている。小学校に入る前に聖書を2度読んだというほどの読書家である。聖書の預言を信ずる保守的なキリスト教シオニストではなかったが、聖書に通じたバプティストとして、聖地にユダヤ教国家樹立というロマンに惹かれる大衆の心情を理解できる男だった。

当時のマーシャル国務長官や中東専門家は、イスラエル承認に反対で翻意を迫るのだが、側近の進言を退けた。その理由を著者は、①(前述の)幼少期からの聖書・聖地への強い思い入れ、庶民的なバプティスト信仰。②ユダヤ難民への同情、労組活動家の多いシオニストへの親近感、シオニストをアメリカ建国史の開拓者に重ねて支持する民主党内リベラル派への配慮、③ユダヤ系大富豪からの選挙資金、在米ユダヤ人団体からの政治的圧力、ユダヤ人の友人の影響などを挙げている。この3要因は、歴代大統領がイスラエルを重視する理由を概ね説明し、両国の特別な関係「聖書の同盟」の基盤であるとしている。

①については、このところブログで記してきた「アブラハム契約」「黙示思想」と大きく関連している。②については、大戦時アメリカは、(前述のセントルイス号のように移民を受け入れなかった事実から)ユダヤ人を見殺しにしたという意識があること。民主党の基盤として労働者階級の支持を受けていたこと。アメリカ建国史とは、ピグリムファーザーズの神話のように迫害を逃れ、聖地を建設した開拓史であることが、イスラエル建国と重ねられるわけだ。ここが重要だと私は思う。

…イスラエルもアメリカも、”民なき土地”に、迫害から逃れ聖地を建設したというのは、極めて欺瞞である。イスラエルには、パレスチナ=アラブ人が、アメリカ新大陸には、ネイティブ・アメリカンが定住していた。彼らの存在は、イエスの説く隣人愛の範疇にはないわけで、ブディストの私としては、この辺の一神教的な神の業である、と済ましてしまうのは、理解不能である。

また、独立戦争時、まずは委任統治をしていたイギリスと戦ったユダヤ人に、アメリカ人は独立戦争を重ね合わせ、イスラエルに親近感をもったとされている。(こうしてみるとアメリカ人は実に単純だと思う。)さてさて、トルーマンは、後に大統領をやめてから、「私はキュロス王。私はキュロス王」とNYのユダヤ教の神学校での講演で誇らしげに口走っている。自分をバビロン捕囚を解き、聖地帰還と神殿再建を許した古代ペルシャ王に擬えたのである。

…やはり、このトルーマンという男、私は好きにはなれない。

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