2024年8月14日水曜日

100分de名著 「旧約聖書」

先日、「聖書の同盟」を購入した時、レジの近くで100分de名著「旧約聖書」を見つけた。このところキリスト教の研鑽を続けているが、そのもとになったユダヤ教については、私はある程度の見識があると思っている。で、無視しようと思ったのだが、著者が千葉大学の加藤隆氏であったので、気が変わった。

加藤隆氏は私が良く教材に使う「武器としての社会類型論」の著者である。そもそも神学が専門の教授である。パラパラと見ていると、かなり詳しい図解や年表があって、買って損はないと思ったのである。じっくりと読むことはないだろうが、手元において時折目にしたい本である。よって全体の書評を記す気はないのだが、面白い箇所があったので、今回は備忘録的に残しておきたい。

旧約聖書のメインであるモーセ五書(創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記)については、「四資料説」というのがある。エズラが中心となって編纂した際の主要な資料があり、それぞれJ・E・P・D資料として表す。もう少し詳細に記すと、J:ヤーヴェ資料(ソロモン王治世末期か南王国初期の前10―9世紀成立。エデンの園、アブラハムの話などユダヤ民族の起源物語。神の名にヤーヴェが用いられ、その名を冠している。)、E:エムロヒ資料(前8世紀に北王国で成立。北王国版のユダヤ民族の起源物語で、アブラハムの物語から始まる。)、D:申命記資料(前7世紀成立で南王国のヨシア王の宗教改革時に作成された掟集。)P:祭祀資料(バビロン捕囚時の前6世紀、捕囚の中にいた祭司が中心になり作成。天地創造から始まる。ユダヤ民族の起源物語の祭司的改訂版ともいうべき。)の4つである。

要するに、エズラ達は、3つの歴史物語(南王国=ユダ王国版・北王国=イスラエル王国版・バビロン捕囚時の祭司改訂版)と、1つの掟集の「四資料」を元に、切り貼り細工のように編纂したようである。

私もかなり前に気づいたのだが、創世記には矛盾点(例えば、エデンの園のアダムとイヴの話と6日間の創世神話では、人類の誕生に相違がある。)があるのだが、エズラ達はできるだけ資料に忠実に編纂した故の矛盾なのである。ちなみに、Dの申命記資料は、モーセの演説の形に再編成されている。ところで、この「四資料説」はあくまで仮説であるそうだ。

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