2022年12月24日土曜日

ロシア・ウクライナの原発 考

https://www.nippon.com/ja/news/reu20220225KBN2KU0FT/
「みんなの知らない世界の原子力」(海外電力調査会編/日本電気協会新聞部)のうち、興味深い国の事情についてエントリーしておきたいと思う。ただし、2017年発行なので多少古い情報になる。

まずは、ロシアとウクライナについて。ロシアは、1954年に世界最初のオブニンスク原発の運転を開始した国で、アメリカ、フランス、日本、中国に次いで世界5位の発電量である。フクシマ後も開発を進めている。その理由の一つは、資源大国(埋蔵量で天然ガスと石炭が世界2位、石油が6位)でありながら、これは外貨獲得の手段で、自国のエネルギーは原発にでまかないたいという経済的理由と、軍事力と核ミサイルが大国ロシアの基盤と考える国民が大多数であり原発に肯定的であることである。さらにロシア製の原発を輸出し、その国のエネルギー安全保障を握ろうという覇権主義的な思惑もあるようだ。ウクライナは、1986年のチェルノブイリ(画像参照)を経験しながらも4号以外はは、IAEAや欧米の批判を受けながらも運転中。ウクライナといえば、有名なドネツ炭田があるが、東部にありロシアと2014年のクリミア半島併合以来頼りにならなないし、油田やガス田はソ連時代に彫り尽くされてしまい、エネルギー不足は国家の存亡にかかわる故であるらしい。ロシア軍が原発を標的にするのも頷ける。

ドイツは、世界でも環境問題に熱心な国だ。緑の党も頑張っている。フランクフルトの空港でゴミ箱がものすごく細かく分別されているのに驚いた経験がある。ドイツの風力発電はバルト海側に多いが、電力需要は南部の大都市が多いので、送電線を建設しようとしているが、電磁波の身体への影響を懸念する住民の反対を受けなかなか進んでいない。再生可能エネルギーへの補助金も大きな国民負担を強いられ、電気料金はヨーロッパでも最も高い。肝心のCO2排出量は、火力発電の使用で横ばい状態にある。それでもなお、国民は脱原発を支持している。今回のエネルギー危機でも脱原発の流れはそう簡単に変わらないだろう。西側諸国で初めて原発を完成させたイギリスは、電力会社の民営化などで、1990年代に完成した原発を最後に停滞していたが、今は、フランスや日本の日立・東芝などの力を借りて原発を再建設している。北海の油田やガス田の生産量減少から、再生可能エネルギーへの転換も進めたのだが、これが今回仇となって、エネルギー危機となったわけだ。

再生可能エネルギーへの転換は、重要な課題であるが、コスト面や安定供給には難がある。原発にも当然ながら甚大なデメリットがある。ただ、火力や再生可能エネルギーとは別格の電力の安定供給というメリットがある故に各国の対応が分かれるわけだ。私は、政治同様、ありのままを生徒に伝え考えさせる立場にある社会科教師として、反原発派でも賛成派でもない。当然ながら、非常に難しい問題だ。

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