立花隆のスタンスは、右か左か長年分からなかったが、彼のベースは両親の信仰していた無教会派のキリスト教であるそうだ。但し彼自身は無神論者である。中東の旅の視点や宗教の相違による死生観の違いを説く中で、キリスト教をよく研究しながらも、その価値観を共有していない。同様に、「田中角栄研究」も「日本共産党研究」も、それぞれよく研究しながらも、右でも左でもない。東大文科Ⅱ類時代は自治会にも入っていたが、共産党系でもブント・新左翼系でもなく、原水禁とも関係して原爆の映画上映をするために渡欧もしているが、以後は、日本の学生運動の浅さを実感したため、左翼運動から離れている。
いわば、マックスウェーバーの言う”天使”の如き立場で、冷静に第三者的に、物事を見てきた人だと言えるだろう。さらに、インタビューのための事前の勉強量が凄い。全く未知の分野でも興味がわけば徹底的に調べる。この二点ゆえに”知の巨人”と呼ばれていたわけだ。過去形で書いたのは、本年4月に逝去し、それが6月になって報道された故である。
私の読んだ立花隆は、Wikipediaのリスト順に「中核vs革マル」「文明の逆説 危機の時代の人間研究」「アメリカ性革命報告」「農協」「青春漂流」「天皇と東大」。もっと読んできたような気がしたが、中・後期の理系が対象のものはほとんど読んでいない。「天皇と東大」は内容的にも、物理的にもボリュームがあった(文庫本が発行されるたびに購入して読んだ。全4巻)ので、かなり読んだような気になっていたようだ。この本は凄い。日本の近現代史研究には必読の書だと思う。
また最も好きなのは「文明の逆説 危機の時代の人間研究」である。友人に勧めたら、口コミでかなり広まり、近所の書店に山積みされていたという逸話がある。
この本の書評はもう一度読み直してから後日エントリーしたいと思う。
私の好きな作家の一人であった。もし氏が存命で元気であったなら、かのアメリカ大統領選挙のデモクレージーやコロナ禍について、信用できる論評を発表していたこと思うと残念でならない。立花隆氏のご冥福を心から祈りたい。
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