ところが、ルイ16世は政治に興味がなく、錠前作りが趣味だったという徳川家定のような人物で、王妃のマリーアントワネットは実家のオーストリアに助けを求めたので話がややこしくなる。歴史に”if”はないが、賢明なる人物であれば、イギリスのような立憲君主制に移行したと思われる。王家の姿勢にあきれた民衆の怒りが、その後のフランス革命を揺り動かすことになるのだが、ここで様々な議会制が生まれていく。ラファイエットなどは、今でいう普通選挙などの発想はなかったようだが、結局無産階級も含めた普通選挙まで行きつく。この後成立した国民公会が、ルイ16世を処刑、当時の対仏大同盟と戦うにあたって徴兵制をしくのである。この頃の政治家としてはジャコバン派の恐怖政治・ロベスピエールが有名であるが、その前のジロンド派が徴兵制を決めたらしい。
この徴兵制=国民皆兵制度こそが、近代国家論の要である。それまでの封建領主や絶対君主に金で雇われた傭兵による戦争を大転換させた。以後4次にわたる対仏大同盟を戦いえたのもこの国民皆兵制度によるところが大きい。その後のナポレオン戦争では、彼のカリスマ性や戦略もあるだろうが、これに加えて自由を拡大する革命軍という他国の民衆の支持があったことも重要である。このナポレオンの勝利が、ヨーロッパ中に国民皆兵制を拡げるきっかけとなった。思い起こしてほしい。ヨーロッパの社会構造は、ギリシア・ローマ以来、戦争に参加できる「自由な個人」と参加しない「不自由な共同体」という二重構造であった。フランス革命は、普通選挙でこの二重構造を根底から破壊した。故に「自由な個人」だけの社会構造になったわけだ。これは、国民皆兵制と完全にリンクしている。
近代国家の三要素は、民主主義、資本主義、国民国家(=国民皆兵制)である。イギリスは、民主主義、資本主義を経て、国民国家=国民皆兵になる。フランスは、民主主義、国民国家=国民皆兵を経て、資本主義化する。ちなみに日本は、まず国民国家=国民皆兵、資本主義(殖産興業)、最後に民主主義(憲法・帝国議会開設)という順で近代国家化される。明治政府が近代化のために最初にやったことは、山県有朋の提案によって廃藩置県して徴兵制を取り、政府の常備軍を農民主体で作ったことであった。学制もその目的のために整備されている。私自身は、山縣有朋は好かないが、近代国家成立の功労者であることは認めざるを得ない。
フランス革命を学ぶことは、近代国家論を学ぶことであると私は思う。
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