https://www.sankei.com/world/news/200925/wor2009250006-n1.html |
国連では、米中の舌戦が展開されているようである。さて、もし中国がアメリカに歴史論争を挑んだらどうなるかという小論があった。実に興味深く読んだ。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20823
中国を支持する人々は、アヘン戦争以後の欧米や日本の中国侵略の歴史を鑑みて、中国を非難するのであれば、アメリカが20世紀初頭からイギリスに変わって覇権を握ろうとした行為はどうなのか、と反論できる。現在の南シナ海をめぐる領有主張については、米西戦争以後に行った一連の行為を取り上げるだろう。
アメリカは国内の領土拡張を、「明白な天命」で正当化し、先住民を仲たがいさせ、時に虐殺して西進した。さらに海外へと進み、キューバの独立を助けるという名目で米西戦争を起こし、キューバを保護国扱いにした。米西戦争で、フィリピンを得、多くの人を拷問し虐殺した。ハワイも併合した。この併合は、アメリカ人を多く移民させ次第に主権を奪った。ウィグル問題を批判する資格はアメリカにはないという反論だ。その他にもパナマ運河の件、テキサスをメキシコから奪った件など、自由、民主主義、人権を掲げて世界に君臨するアメリカは笑止千万ということになるわけだ。
…たしかに、(中国はこれを口にしていないが)この歴史論争は十分ありうる話である。ただ私は、アメリカはこの論争には乗らないと思う。日本の感覚では、自己にベクトルを向け反省する事、率直に詫びることが美徳であるが、欧米にその感覚は極めて薄いと思う。この小論の著者は、日本の感覚を重視している。たしかに、この論争が起こった時、日本はどういう意見を持つべきか、日本でも論争になるだろう。だが、あくまで日本の感覚は決してグローバルスタンダードではないと私は思うのだ。
…かの原爆投下は戦争犯罪ではないのか?大都市への焼夷弾での一般人への無差別爆撃は戦争犯罪ではないのか?などという論議は、アメリカには一切無視されている。未だにアメリカの航空博物館に行くと、必ずリメンバー・パールハーバーのコーナーがある。正義は我にあるという強い信念すら感じる。もし、中国がこの論を持ちだしたら、日本は怯むと思うが、アメリカ(とイギリス・フランス・ドイツ、ロシアさえも)はそれがどうした?と嘲笑するような気がする。かの時代では、帝国主義的侵略は正義であったのだ、と。正義は力であり、概念ではないというだろう。今の時代はグローバル化し、侵略戦争を悪と断じ、人権は世界的に認められている、昔と今は価値観が異なるのだ、という底意とした嘲笑である。
…中国の思考回路は、日本よりもどちらかと言えば欧米に近いと私は考えている。ただ、中国はもう少し複雑で、矛盾する2つの概念を場に応じて、また時に応じて使い分ける。どちらにせよ、この歴史論争はプロパガンダには用いられるかもしれないが、大きな問題にならないだろうと私は思うのだ。嘲笑する必要はないが、日本も黙っていればよい。
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