日本に一時帰国したとき、息子からまだ読んでいないけれど先に読むか?と託された本が3冊あった。その一冊が長々とエントリーした中田考氏の「帝国の復興と啓蒙の未来」である。残りの二冊は松山洋平「イスラーム思想を読み解く」と佐藤優の「集中講義 民族問題」であった。結局、この二冊はパラパラと斜め読みして終わってしまった。ところで佐藤優の本の同時新刊の広告に、この「知立国家イスラエル」(米山伸郎/文春新書・本年10月20日発行)が載っていたのである。タイトルに大いに惹かれたので、アマゾンで注文し、帰国時の機内で読み始めた。エアー・アジアXは、全くエンターテーメントがないので、読書するか睡眠しか選択肢がない、修行のようなフライトである。(笑)しかも、この本、第一章は全く面白くないのだ。第二章はちょっと面白くなり、第三章で初めて購入してよかったと思える本である。新刊なので、あまり詳しく書かないほうが良いと思っているのだが、少しだけ内容をエントリーしておきたい。
イスラエルには徴兵がある。実際イスラエルに行った際にも、多くの高校生は徴兵があるゆえにあまり勉強しないと聞いた。しかし、上位の人間は全く違うようだ。5万人の同学年の生徒の記憶力、繊細さ、知性、性格を測定するための計量的心理テストと知能テストが行われ、56段階に振り分けされるとのこと。これに体力試験を含め、97段階に分類され、パイロットなどになるにはトップの97になることが必要とされる。軍は、この結果を踏まえ、各人にいくつかの配属先を提示し選択させるらしい。極めて合理的なシステムになっている。
ところで、理工系の最優秀な30人ほどはタルビオットと呼ばれる最先端軍事技術を学ぶプログラムに送られる。彼らが軍の中で教育を受け、さらに高度な専門分野を学び、イスラエルのIT技術(国防だけでなく、民間の技術も含めて)を支えており、起業してGDPを稼いでいる。また、8200部隊というサイバー諜報活動に入るエリートもいる。
これらのエリートをイスラエルはうまく抽出し、育て、国防にも経済にも活用しているわけだ。結局、国家を支える一握りのエリートを育てる能力というのが、国家の存立に関わるという極めて分かりやすい例だなと思う次第。
2017年11月24日金曜日
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