飛行機の中で、内田樹氏の「日本辺境論」(これも日本人会の無人古本コーナーで手に入れた。)を読んでいた。この本の冒頭で、内田氏は「大きな物語が消えてしまった」ことを嘆いている。大きな物語とは、たとえばマルクスの階級闘争の歴史論(自由人と奴隷・貴族と平民・領主と農奴・ギルドに属する親方と旅職人の4種)のような、「大雑把な括り方」を意味する。
ところで、今「帝国の復興と啓蒙の未来」(中田考著/太田出版・2017年7月28日)を読んでいるのだが、冒頭、中田考氏は、以下のように地政学的な「大きな物語」を提示している。
現在の世界は、西欧文明がその特殊な啓蒙の歴史的使命を終え、ローカルな1つの文明の地位に沈降しつつある一方、グリーバリズムの名を纏ったアメリカのどう猛な経済覇権主義が世界各地に防衛本能として経済ブロック化を招来し、そのブロック化が文明圏の再編の形を取ることで、ロシア、中国の領域国民国家の枠を越えた帝国としての存在の復興の野望をあからさまに誇示するようになり、第三次世界大戦前夜とも言える状況になりつつある。こうした動きの触媒となっているのが、文明の十字路に位置したユーラシア大陸とアフリカ大陸にまたがるイスラーム世界の中心部オスマン帝国の旧領である。
2015年1月7日、パリのシャルリー社が襲撃された。この日は、「服従」という近未来小説が発売された日でもある。浅田彰は、「あらかじめベストセラーになるべく予定されていた「服従」は歴史的事件となった。」(パリのテロとウエルベックの服従)と言った。この「服従」という小説は2022年にフランス大統領選挙でムスリム同胞団の候補者が勝利し、フランスがアッラーに服従するという衝撃的な内容だったのだ。著者のウエルベッグはフランスのベストセラー作家である。
この「服従」を元に、中田氏はヨーロッパとイスラムの関係性を説いていくのだが、それはまた次回以降のエントリーということで…。
2017年11月14日火曜日
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