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ところで、国費生は、文系・理系が入り交じって、日本語の授業で、代表的な日本人についての調べ学習をしている。湯川秀樹や松下幸之助、イチローなど著名な人物を調べるのである。聞くとプレゼンの時間は30分だという。なかなか本格的である。実は、この人物の選定の時には私も相談を受け、日本語の先生方とともに選定作業に参加したのだった。私が特に押したのは、新渡戸稲造と緒方貞子である。
すでに、ウィキなどを元に学生諸君はだいぶ調べていた。今日、いくつかのグループから質問を受けた。まずは、その新渡戸稲造グループ。「武士道」という海外でのベストセラーとなった日本紹介本を書いたことが大きい。T/ルーズベルトが、彼の本を愛読していて、日露戦争の仲介に労を惜しまなかったことも有名である。しかも札幌農学校以来のクリスチャン。(後にクウェーカー教徒になっている。)そういうこともあって、国際連盟の事務次長にもなっている。WWⅡ前には、アメリカで日本の立場を唱えるが、失意の中でビクトリアで客死した。学生から様々な質問があったけれど、結局武士道そのままの人生であったような気がする。特に晩年の客死は、日本を代表する国際人としては、本懐であるといってもよい。細かな質問が多かったが、ひとつひとつ丁寧に答えた。
杉原千畝についても、そのグループから質問があった。彼もまた、外務省本省に逆らいユダヤ人を助けたが、その責を問われることに覚悟を決めていたわけで、忠義という観点はともかく、武士道を貫いた側面がある。ところで、なぜソ連に対して、ユダヤ人たちが恐怖心をもっていたかについての質問。ソ連のポーランド東部への侵攻と、過去のボグロムについて説明した。
さらに緒方貞子、津田梅子についても質問があった。緒方貞子の凄いところは、やはり人間の安全保障という概念をセンとともにつくり、広め、実践したところにある。島国の日本を飛び出した地球市民であるところに彼女の凄みと人間力の深さがあると思う。津田梅子に関して、学生は「良妻賢母」になりきれなかったことに疑問を持っていた。6歳で渡米させられた津田は、アメリカ人女性であるといっても過言ではない。国策としての外交上必要な欧米的教養をもった道具としての女性であることを善としなかったわけだ。この辺の洞察は、明治の初期の日本の外交政策を理解していないと、またアメリカ人の好む自立した女性像がわからないと難しいところだ。これも丁寧に説明した。
マレーの学生は、調べるだけ調べて、ディープな疑問をぶつけてくる。かなり高度な質問で、大いに嬉しかったのである。ところで、やっぱり、日本人のDNAには、武士道的な精神構造が生きながらえている、と再確認した次第。
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