2016年11月10日木曜日

大森実「ムッソリーニ」再読(2)

ソフィア・ローレン
http://blogs.yahoo.co.jp/
gh_jimaku/25222962.html
大森実の人物現代史「ムッソリーニ」を再読して、枝葉末節的な話もエントリーしておこうと思う。

ムッソリーニと言えば、最後は愛人と逆さ吊りになったことで有名だが、ちゃんとした妻がいた。父が居酒屋をやっていたときに、後妻となった家政婦の連れ子だったというラシェーレ夫人である。彼女は昭和天皇から贈られたという石灯籠を持っていたらしい。三男はジャズピアニストとなったロマーノ。彼はソフィア・ローレン(女優:ひまわりが特に有名)の妹を妻にした。ラシェーレ夫人と、このソフィア・ローレンの妹は、有名人の陰の存在としての共通点もあって、嫁姑の関係ながらウマがあったらしい。

逆さ吊りになった愛人は、クラーラ。愛人といっても離婚できないカトリック故に夫と別居中の婦人である。結婚前から熱烈な総統(ドーチェ)のファンで、まるで映画になるような運命の糸とロマンチックなドラマがある。処刑の時も、ムッソリーニを庇うようにして機関銃で撃たれたという。

最初は完全にムッソリーニの立場が上だったが、ヒトラーとは主客転倒する。最初のヒトラーの訪問時はヒトラーが屈辱感をいやというほど味わうのだが、ムッソリーニの訪問時はヒトラーは、こんな演出でもてなす。ムッソリーニの乗る特別列車の対向車線をヒトラーの乗った特別列車が追ってきて、ピタリ並走。文字どおりの「枢軸」の演出である。終着駅が近づくと、ヒトラーの列車だけが速度を増し、プラットフォームででムッソリーニを待ったという。屈辱を裏返しにしたわけだが、完全に主客は転倒していたからこその余裕だったわけだ。

ヒトラーの話もこの巻では多く出てくる。後にシンガポールを枢軸同盟の日本が占領したとき、ヒトラーはこうつぶやいたという。「枢軸同盟の日本が勝った。これは喜ばしいことだが、あの黄色いサルどもが英国人たちを降伏させたことを考えると、俺はドイツの六個師団を英国に貸してやりたかった気がする。」

…なんか、大統領選で勝利した男も言いそうなセリフである。

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