新聞の広告欄で、沢木耕太郎のエッセイの文庫本が出たことを知って、すぐ買い求めた。帯には、「バーボン・ストリート」「チェーン・スモーキング」に連なる必読の傑作エッセイ集!とある。この2冊のエッセイ集も私は大好きだ。一刻も早く読まねばならない。
何度か書いているが、私は沢木耕太郎の大ファンである。何より文章が読みやすい。そして、素材も構成も素晴らしい。このブログでもエッセイ風の文章を書くことがあるが、常に沢木耕太郎のような文章を意識している。
最初のエッセイでは、沢木耕太郎が中国で初体験の盗難に合う話から始まる。エッセイの内容に深く踏み込むのは無粋なので、私も海外での初体験の盗難について書こうかと思う。
私も、沢木耕太郎と同じく、一度だけ盗難にあったことがある。ちょっと凄い場所だ。ニューヨークの国連本部である。国連本部のツアーが終わり、スーベニア・ショップに立ち寄った。国連本部と言えど、商業主義の総本家・アメリカである。様々な国連グッズが売られている。あれもこれもと、$30くらいの買い物をしただろうか。その後、ふと思い出した。ここ国連本部には独自の郵便局があって、国連が発行する切手が唯一通用する場所である。記念にと、自宅の妻宛に送っておこうかと思い立ったのだ。で、郵便局に寄り、葉書を書いていたのである、グッズの入ったブラスチック・バック(要するにビニール袋だ。)を横において書き、すぐ近くのポストに入れにいった。その間20秒ほど。その間に、プラスチック・バックが消えたのだ。
仕方なく、もういちどグッズを買い求めたのだけれど、なんとも後味の悪い話だった。だが、失くして大きな後悔が残るものではなかった。貴重品ではないし、取り溜めたフィルムでもないし、その場で買い直せばいいだけのことだった。その辺、私も沢木耕太郎と同様、すぐ気を取り直した。海外での貴重な時間をうじうじと後悔するようなことに使いたくないし、常にポジティブな思考で乗り切った。この経験が、さらに海外での行動に役立った。$30は、そのための投資のようなものだった。
信じがたい話だが、中国であるにもかかわらず、沢木耕太郎のバックパックは後に帰ってくる。自分の勘違いで置き場所を間違えてしまったかもしれないと彼は考えるのだ。(ここまでなら内容をバラしてもゆるされるかなと思う。)実は、この箇所を読んで、もうひとつ思い出したことがある。
カリフォルニア州サンディエゴで、あるビルの駐車場にレンタカーを停めた。戻ってみると、いくら探してもレンタカーがない。冷や汗などというものではなかった。駐車券を見て、違うビルの駐車場だとわかったときは、全身の力が抜けたのだった。
この経験から、一人旅で無理をすると、つい、こういうミスをするということを学んだ。自分一人でどれぐらい出来るかの限界点を知ることになった。以後、疲れたなあと思うと、旅のギアを下げ、できるだけ休むことににしている。
生徒たちに、海外の話をよくする私だが、この辺の恥ずかしい失敗談は「ポーカー・フェース」を決め込んで、語ることはまずない。(笑)
2014年5月4日日曜日
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