2024年1月21日日曜日

主権国家と近代世界システム

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57562
「先生も知らない世界史」のエントリー第7回目。主権国家が先か、近代世界システムが先か?という視点についてのエントリー。主権国家=近代国家=領域国民国家であるが、教科書で抜け落ちている部分は、税金との関係であると玉木俊明氏は指摘する。主権国家の領域は、中央政府が税金をかけることができる範囲であるといえる。しかも戦争によって近代が出来上がったと言っても過言ではなく、税金の多くが戦費に費やされた。一般に近世の軍事国家としてプロイセン・フリードリヒ大王の名が挙がるが、軍事大国としての(軍隊を維持する)経済的システムの構築には失敗している。これは自国内に製糖所を建設したのだが、ハンブルグの製糖業との価格競争に破れたからである。

オランダ(画像参照)は最も早く財政制度を近代化した国で、スペインからの独立戦争の戦費捻出(1690年代の国家予算の90%が軍事費)のために重税国家となったのだが、貿易取引には課税せず、経済的繁栄を維持しながら、公債を発行し戦費に資金を回すというシステムを構築した。比較的下層の国民も公債を買っていたという。このシステムこそ近代世界システムなのである。これを継承したのが、国債で戦費を賄っていた前述のイギリスである。フランスの税制は、直接税である地租が中心で、奢侈品に対する消費税中心だったイギリスと好対照で、フランスは戦費調達方法がが前近代的であったため、革命前には財政破綻に陥っていたわけだ。

近世において、ヨーロッパの多くの地域経済を包摂した巨大な経済単位である「世界システム」が機能したからこそ主権国家が成立したと見なすべきで、経済的には、主権国家は世界システムのサブシステムとして機能した。主権国家成立が存続するためには、近代世界システムが不可欠だったいうのが結論である。

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