2024年1月14日日曜日

共通テスト2024 倫理

共通テストの倫理の問題が明らかになったので、今年も講評というとおこがましいが、感想を記しておきたいと思う。まず、全体的には、細かな問題が多く、また選択肢も非常に微妙なものも多い。要するにいやらしい問題が多い。

今年の倫理はこれまで以上に授業のスピードをあげつつ、多くの思想家をやったので、ロールズやマッキンタイヤー、レヴィナスなどの問題にもなんとか対応できるだろうと思う。やっぱりというか今年も倫理政経では省かれていたが、西田幾多郎が出題された。ドイツ観念論のシェリングは、カントからヘーゲルの流れの中でしか説明していない。現場から見ると、どこまで対応せい、と言うのかと感じてしまう。倫理のカリキュラムとして4時間くれるなら別だが…。本当に教科書に準拠した問題なのだろうかと思う次第。

気になった問題はたくさんあるのだが、2題だけ挙げてみる。上記画像は、レヴィナスの問題。正解は①。レヴィナスのいう「他者」は神である。それは生徒たちも理解していると思うが、③と間違いやすい。「異質なもの」という表現に気づいて①を選んでくれていれば、と思う。ちなみに倫理政経の問題では省かれている。
アマルティア=センの問題。正誤を問う問題だが、アが正だというのはわかりやすい。イは実に微妙な表現になっている。開発経済学的に、途上国の貧困は、特にアフリカなどでは農業が主因でこの文章をさらっと読めば正だと思うはずだ。ただし、よくよく問題文を読むと「飢饉に苦しむのは」とある。センはインド人の経済学者であり、インドにおける飢餓は、気候面が主因である。さらにいやらしいのは、最後に「一因」という表現があることで迷いを増幅させる。結局、誤であるわけだが、このような問題が高校生に適切なのだろうか、と現場の人間は思うのである。こちらは倫理政経の問題にも入っている。

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