2022年1月8日土曜日

PBTの教え子の卒論を読む

PBT・F38の教え子から、年賀状が来て、返信したら卒論が添付させれてきた。マレーシア時代から、日本語も私の社会科も超優秀な教え子で、日本文学大好き少女だったI君である。

椎名麟三の「永遠なる序章」についての論文であった。私は、小説をほとんど読まないので、当然ながら読んでいない。だが、引き込まれて長い論文を一読した。実に面白かったのである。最初、椎名の文体についての各所からの批判について記されている。椎名は、他の文学者と比して、インテリではない。インテリの文学者はあえて、概念的な語彙を避ける傾向にあるし、反復を悪文と規定している。評論家はその点から酷評しているのだが…。

また、椎名は貧困な労働者出身であり、一次左翼活動に入り、ドストエフスキーを読んで転向している。最終的にキリスト者となっているようだ。最も影響を受けたのはキルケゴールだという。ニーチェにも影響を受けているが、結局イエスの復活を信じることで死を超克しようとしているようだ。この小説でも、自由の問題、死の問題が大きなテーマとなっているようで、この辺が実に面白かった。

私は返信の中で、こんなことを書いた。「死を克服するという実に実存的な人生の課題は、私は椎名のようにイエスの復活にあるのではなく、仏教的な超克にあると思っています。だから、もし明日死んでも悔いはない、そんな人生を送っています。ただ、F40のL君という子が一浪してD大に入りながら、コロナ禍でまだマレーシアなので、それが心残り。今教えている三崎高校の教え子をまだ共通テストで勝利させていないのが心残り。こういう煩悩があります。(笑)だが、この煩悩を無くすのではなく、菩薩道の中で、煩悩即菩提させていくような人生を送っています。日常の中に死の克服があるわけです。」

I君の卒論は、想像以上にすばらしいものだった。とても日本語を学んで6年とは思えない、読解力と語彙力、そして文章力だった。彼女のこれからの進路希望も聞いた。是非再会したいと思う。

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