2020年1月6日月曜日

現時点でのイラン危機考

https://www.islamtimes.org/en/article/804174/pretty-please-trump-asked-iran-to-allow-him-bomb-it
3日に、イランの革命防衛隊のゴドス部隊の司令官をバグダッド空港近くにおいて空爆で殺害したことに、世界は大きな衝撃を受けている。これからどうなるのか、イランの出方を注視していたら、バグダッドの米国大使館に向けロケット弾が打たれたが、米国人の死者は出ていない。イラクの国会は、米軍の国内からの撤退要求を決議した。

もし、このロケット弾が大使館に命中し、死者が出てていたら開戦の可能性は高まっただろう。おそらくイランはわざと外したのではないかと私は思う。もちろん、イラク議会が米軍の撤退要求を出すことを見据えた上での戦略だと思う。要するに小競り合いの域を出ないようにしているわけだ。国際関係を志望する教え子諸君には、以下の斎藤彰氏の記事が最も参考になると思うので、内容を整理しておく。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/16662

そもそも、このイラン危機、どう見ても米国大統領閣下の方が分が悪い。なぜなら昨年5月の「イラン核合意」からの一方的離脱とこの離脱を口実にした経済制裁がきっかけである。イギリスが今回の暗殺に一定の理解を示してはいるものの、独・仏などは批判的だ。もし、小競り合いから開戦となっても、西欧諸国を含めた多国籍軍などは形成できないだろう。
米国内での世論調査でもイランへの先制攻撃に賛成は12%、反対は60%らしい。ブッシュのイラク戦争時の90%近い支持はない。しかも、高原の国であるイランでの戦争はイラク以上の莫大な出費を伴うはずで、大統領閣下を支持する中西部保守層から見放される可能性もある。現に大統領閣下は、昨年イランの軍事拠点攻撃を10分前に中止している。
中露がイラン側についていることも、さらなる険悪化を招くことは必定である。
そもそも、威勢はいいが、ビジネスマン出身の大統領閣下は、金の無駄使いのような戦争を望んでいないようである。

…と、いうわけで小競り合いはあるだろうが、お互いに開戦にはもっていかないだろうと私は思っている。ただ、偶発的な問題や大統領選の趨勢あるいは弾劾問題にからんで開戦する可能性は捨てきれないわけで、双方の冷静な判断(これがどうも信用できない!)を願うばかりである。

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