2013年2月26日火曜日

レンティア国家 赤道ギニア

平野克己先生の「経済大陸アフリカ」、物凄く面白い。今日は第2章の「資源開発がアフリカをかえる」の記述から、赤道ギニアの話をエントリーしたい。第2章の内容のポイントを挙げるためのイントロダクションとしたいのだ。

1973年の第四次中東戦争以後、石油メジャーは中東における上流権益を失った。1980年以降石油低価格時代の供給増を北海油田や北米油田がささえた。しかし90年代後半から石油メジャーは新たな権益を求めて各地で探査に乗り出す。アフリカにおいて、この最初の一歩となったのが赤道ギニアだった。スペインの植民地だった赤道ギニアは1980年代末の時点で、1人あたりGDPが$300台の最貧国で、旧宗主国から1人あたり$150のODAを受けて命脈を保っていた。独裁政権だったが、ある意味では安定しているわけで、エクソン・モービル社によって海底油田の開発が進められた。わずか数年でGDPと同額の原油を輸出する産を油国となり、98年からは天然ガス生産も始まり、年平均40%を超える成長率で成長し続けた。今や韓国並みの1人あたりGDPである。その一方で乳幼児死亡率は未だに10%を越えており、平均寿命は50歳に満たない。今でも1人あたり$50のODAを供与されている。1人あたりのGDPが2万ドルを超える国でODAを受けているのは世界中で赤道ギニアだけだ。「開発なき成長」「資源の呪い」の典型である。

このような極端な例だけでなく、スーダン、アンゴラ、チャド、モーリタニアといった国で石油開発が進展した。ウガンダやガーナでも油田が発見され大規模投資を呼び込んでいる。またギニアやモザンビークの鉄鉱石、タンザニアの金、ナミビアのウラン、ザンビアの銅、マダガスカルのニッケルなど鉱山開発投資がアフリカに流入している。こういう、レント(資源産出から税金やロイヤリティを通じて徴収する収入)を主要な収入源とする国の経済は、資本主義経済とは違った原理が働く。このような国家を「レンティア国家」と呼ぶ。そもそも中東産油国を想定したものだが、そこにはレント収入の確保と分配が国家運営の基軸となり、生産志向の希薄な、国家主義的で保守的な政治が行われ、開発よりも権力維持のためにレントを使うようになるので、消費性向が高い、現状維持的で開発志向に欠けた政府が出来上がるとされる。

アフリカにだけ目を向けているとわからない、極めて重要な視点である。アフリカでは、こういう資源開発がどんどん進められていてニュースになる。それらは「レンティア国家」となり、開発を忘れた国家(貧困を撲滅する気がない国家といってもよい。)になっていくわけだ。うーむ。

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