稲森氏は就任後、全社の業務報告会を開く。各責任者に問題点をビシビシ指摘するので、担当者はかなりまいったらしい。80歳にもなる稲森氏が、A3版の細かな数字が並ぶ書類をなめるように見て指摘するのだ。現在のJAL社長である植木氏も、本部長時代かなり指摘された経験をもつ。「パイロットが使うヘッドセットの修理代は何故増えているのか?」この質問に答えられず辟易としたらしい。以後各責任者は何を聞かれても答えられるよう現場に入り、報告会に備えるようになったという。
稲森氏は約100社ある子会社の社長とも面談した。月月火水木金金。休日は関係なしで、朝から晩までぶっとうしだったそうだ。稲森氏曰く「細部を見なければ全体は見えない。」
さて、今日のエントリーの主題。植木氏はある時、稲森氏に質問したそうだ。「(A3版の書類の膨大な数字の列の中から)何故問題となる数字が見えるのですか?」稲森氏曰く「おかしなところは、向うから数字が目に飛び込んでくるんや。」
植木氏は34年のパイロット歴をもつ。コクピットに座ると、異常な数値は探さなくとも目に飛び込んでくるようになったことを思い出したという。経営も同じだ。そう思うのだが、まだまだ稲森氏の境地には達していないと言う。
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