2012年4月14日土曜日

京大アフリカ研'12公開講座4月

ちょっと花冷えの京大稲森財団記念館
新学期の疲れがたいぶ残っているようで、京阪特急内では爆睡してしまった。しかも今日はかなり早く着いたので、前から見たかった稲森財団記念館1Fで京大学術調査隊の記録映画『カラコルム』を見ていたのだが、またちょっとウトウトしたのだった。(ちょっと申し訳ない気持ちである。)と、まあ最悪の状況下で、今日は公開講座に参加したわけだ。

ところが、今日は大山修一先生の講座である。私は昨年の大山先生の講座(昨年6月18日付ブログ参照)に大いに感激したので、楽しみにしていたのだ。大山先生の研究は、開発経済学的な視点をもった地域研究だからである。また、VTR等を使っての解説もあって面白い。
今回のテーマは『ゴミをまく人びとに出会う』-サヘル(サハラ砂漠南縁)にあるニジェールの話である。深刻なサヘルの砂漠化、その原因については様々に語られてきた。しかし現地で生活する人々がどう対処しているのかについてはあまり語られていない。

まずは、ニジェールの現状や調査地のダンダグン村の様子をもとに、砂漠化のメカニズムついて教えていただいた。サヘル地域は、そもそも「アレノソル」と呼ばれるアフリカ三大劣悪土壌の1つ、南からの強風で風化の進んだ石英砂を主体にした有機物や有機窒素、リン酸浮含有量の少ない土壌なのだ。良い土というのは、土と土が様々な生物によって、空気や水、また根が入りやすい適度な空間をもちながらひっついている団粒構造だそうだが、ここの土は砂の割合が80%もあり、粘土質は5%の単粒構造なんだそうだ。
回ってきて手に取った「押し鍬」
しかもこの地域では雨季には極めて強い雨が降る。そのため土が撹拌され軽い粘土質やシルトが上に押し上げられ膜(表面被殻)をつくる。この膜は水を浸透させない。…私もブルキナで経験したが、雨が降ると、一気に街が洪水のような感じになった。わかる、わかりますよぉ。そこで、村では雨季には、男性がくそ暑い中でこの表面被殻を鍬で破壊し、水を浸透しやすいようにするそうだ。その鍬(押し鍬)を実際に見せていただいた。…これもブルキナ北部の畑で私は見たことがある。耕すにしては浅いよなあと、その時は感じたのだが、非常に合理的な作業だったわけだ。これも、わかる。わかりますよぉ。(この辺、講座終了後で大山先生と話をさせていただいたのだが、実際に現場に行かないと実にわかりにくい話だということで一致したのだった。)
さて、村では、主にミレットを栽培しているのだが、状態の良い土地をKasa、連作によって養分が抜けた状態の土地をLeso、セメント状に固結したFokoと現地語のハウサ語で呼ぶ。この最も農耕が困難なFokoに、彼らは、家畜の糞や家から出たゴミをまくのだ。これはTakiと呼ばれ、着古された衣類やゴムサンダルまで含まれる。調査をしてみると、Fokoは強酸性で栄養がないのだが、Takiは栄養が豊富で、しかも弱アルカリ性でちょうど中和されるそうだ。…凄い生きる知恵である。

京大HPより Fokoに撒いたゴミの後
大山先生は、都市のゴミを持ってきてさらにFokoに撒いてみてはどうかと考えられた。村の長老から実験地2.7ha(元牧草地で当然Fokoである。)を預かり、実験・調査したところ、ゴミを撒いたところに種も撒いていないのに草が生えてきた。そこに、村の家畜が草をはみにくるようになったのだ。
面白いのは、彼らは、ゴミに交じったプラスチックや金属なども撒く。そのほうが重しになったり、砂がたまったりするので良い、問題ないとしている。(見た目は、我々日本人にはギョッとするのだが、現地ではあまり違和感はない。これも実際行ってみないとわからないと言う点で大山先生と一致したのだった。)しかし、調査によって家庭から離れた場所で、臭素や鉛、クロムなどの重金属が検出されたとのこと。都市のゴミ採集した103か所のうち5か所という少ない数値だが、都市から得るゴミは、家庭から出された直後の有機物のゴミを使用することが望ましいという結論に達したそうだ。ゴミは、20kg以上入れると効果的なことも判明した。ゴミは山のように置いておくと、飛砂が溜まり、団粒構造が形成され、シロアリが住みつき、粘土などを持ちあげてくれることがわかった。しかもシロアリの造る穴が雨水を浸透させているらしい。しかも、前述のようにpHが強制され、栄養分が添加されるという。

ところで大山先生は重要なことを質問会で語られた。調査した村人がハウサ人であること。私の知るハウサは、商業に秀でた人々だ。(荒熊さんからの受け売りであるが…)ハウサは「人も自然も動くものだ。」と言う。西アフリカは東アフリカと違って競争原理が強い。働くことが美徳だと信じるハウサは生きるための糸口を見つけると猛烈に動く。このゴミを使ったサヘルの土壌改造は、そういうハウサの美徳によって、あちこちで行われるようになっているのだという。一方、共生しているおっとりしたザルマの人々にはまだ広まっていないのだという。面白い。

また講座の最初に「これはアフリカだけの話ではない。」とも言われた。農村から都市へと栄養分が移動し、都市でそれらは喪失されていく。エネルギーや環境問題から見た時、これは大きな損失である。もう少し時間があれば、日本の現状をもっと語り、大山先生は、きっとこう言われたのではないかと思うのだ。「日本がアフリカに学ぶことは、たくさんあるのです。」

帰りの京阪特急では寝れなかった。講座会場の後方に置かれていたイッツ・フリーの大山先生の論文のコピー2通をむさぼるように読んでいたからだ。いやあ、眠気を覚ますような良い話を聞いた。私の「高校生のためのアフリカ開発経済学テキスト」新ヴァージョンに是非とも書き入れたい話だった。(重田先生の紹介によると)京大アフリカ研究者第四世代代表の大山先生、本当にありがとうございました。おおいに勉強させていただきました。

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