だいぶ前に『ハーバードの「世界を動かす授業」』(リチャード・ヴィトゥー著/徳間文庫)という本を買ってちょこちょこ読んできた。新学期で疲れているのだろうか、通勤電車で読んでいても、すぐ睡魔が襲うのでなかなか読破できなかったのだった。というわけで今日やっと読み終えたのだ。
この本は、ハーバードのビジネススクールで、講義されている国際経済の授業内容が記されている。おおいに勉強になる本である。世界中から集まるビジネス・エリートを相手に、縦横無尽に様々な国家の戦略について語り、国を背負っている学生に論争を挑んでいくという、凄い授業スタイルをとる大先生らしい。こういう講義、さぞかし面白いだろうなあと思う。
勉強になったことはいろいろあるのだが、今回のエントリーでは、南アについて書かれた部分について感じたことを書きたい。昨日エントリーしたBRICSの話、ちょっと前まではBRICsであった。世界に影響を持ってきた新興国に南アが入り、”s”が”S”になったのだ。
私の「高校生のためのアフリカ開発経済学テキスト」でも、南アは一応サブ・サハラ=アフリカのテリトリーに入れているのだが、あまり触れていない。他の国々と経済規模が違いすぎるからである。実際、南アのフリーウェイを走ったりすると、ここはカリフォルニアではないか?と思うほどである。
この本では、南アをメキシコとともに「挟まって身動きがとれない国」という概念で捉えている。低付加価値商品で中国に勝つことが出来ず、高付加価値商品で日本やシンガポールと競うこともできない。マレーシア、トルコ、ラテンアメリカ諸国と一緒で挟まってしまっていると表されているのだ。
GEAR(マンデラ政権下の成長・雇用および再分配と呼ばれたマクロ経済開発戦略)、さらにはBEE(ムベキ政権下の黒人への経済権限付与)について解説した後、南アの問題点を指摘していく。南アは自分たちが何が得意とする部門は何なのかを考える必要があり、何らかの方法で差別化をしなければならない。犯罪をなくせば、南アの観光業は世界一になるに違いない。鉱産資源も恵まれているが、利用できれば、の話であると手厳しい。何より、そういう戦略に集中し国民が一生懸命働かなければ、グローバリゼーションの中で生き延びれないというのだ。
『南アの新しい市民にどれくらい勤労意欲があるのか、はっきりわからない。彼らは何年もの間、働くことではなく権利を得ることばかり考えてきた。前進するためにには働けなければならないし、学校に通わなくてはならない、という考え方に適応するのは難しいだろう。』と、大先生は、全く忌憚なくおっしゃるのだ。
うーむ。なるほど…と思う。凄い。アメリカの資本主義の祖・ピューリタンの大精神で、”快刀乱麻”というところか。グローバリゼーションは、アメリカ化という一側面がある。勝ち抜くにはそういう発想が必要なのだろう。誠に面白いが、これこそがが「正義」だと言う勇気は私にはないのだった。
2012年4月19日木曜日
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