2012年2月7日火曜日

アマルティア・セン氏の来日

日本経済新聞を今朝読んでいて、ハーバード大学のアマルティア・セン教授が来日していることを知った。今日・明日と開かれる「世界文化フォーラム2012」の総合議長をするそうだ。開発経済学を多少かじっている私からすれば、たとえノーベル経済学賞受賞者であることを差しい引いても、ビッグネーム中のビッグネームである。今日の記事は、日経記者によるセン教授へのインタヴューであった。タイトルは、『市場経済の価値 不変』これを読んで、特に意外だなという感想はない。セン教授は、「市場を飼いならす」という立場で、公正な分配(特に途上国の貧困撲滅)を主張しているのであるから当然だろうと思う。特に、以下の発言は、セン氏らしい。

『必要なのは市場と公的セクターの役割をうまく融合することだ。例えば市場が関知しない起訴的な教育、保健医療サービスなどは政府が提供しなければならない。市場を安定させるためには金融機関の活動に一定の制限を加えることも考えるべきだろう。何でも市場原理で自律的に回復するわけではない。』

要するに、「市場を飼いならせ」と言っているのだ。記者は、「記者の目」で、『セン教授は、グローバル化が「生活条件の大きな進歩につながっている。」と述べているが、一方で必ずしも貧困者の利益につながらない現状を率直に認めている。インタヴューでは経済格差を是正する有効な手段には触れなかった。民主主義と市場経済に代る新しいシステムが見えない限り、貧困という不正義の解消策は大きな課題として残る。』と批判的なコメントで締めくくっている。
http://www.nikkei.com/news/interview/genre/article/g=96958A96889DE1EAE4E0E2EBE7E2E2E5E2E0E0E2E3E09494E3E2E2E2;p=9694E3E3E2E1E0E2E3E2E7E4E4EA;o=9694E3E2E2E1E0E2E3E2E7E4E7E3

要するに、今の欧米や日本の政治家は、とても市場を飼いならしているとは思えないという批判であろう。私も同感だが、記者の言うようなパラダイムは、すぐにはおこりそうもないと思うのだ。

私は経済の専門家ではないので、これ以上コメントできないが、今日の同じ日経の経済教室で、エネルギー資源の新たなパラダイムの話が載っていた。シェールガスなどの非在来型の新資源が、世界の資源地図を塗りかえるのではないかという話だった。中東から、米・加に比重が移ると言うのだ。日本にも非従来型の資源がありそうだとも。(この日経のWEBニュースは有料ページみたいである。)

世界は激動している。もしかしたら記者の言うようなパラダイムが秘かに進んでいるのかもしれない。だが、私は現状ではセン教授の「市場を飼いならす」という立場こそが、王道だと思うのだが…。

2 件のコメント:

  1. セン教授の本を読んでみたいと思いながら、まだ読んだことがありません。入門としておすすめの1冊がありましたら教えていただけませんか?

    記事とは無関係なのですが、またブログを「はてな」に戻すことにしました。リンク先の更新をお願いします。更新頻度の低いブログですが、またよろしくお願います。

    「非常勤講師のかくし部屋」
    http://parttime-lec.hatenablog.com/

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  2. 非常勤講師さん、コメントありがとうございます。センの本ですが、恥ずかしながら様々な開発経済学の本の要約の集大成のようなカタチでセン氏の理論を学びました。読むとすれば「合理的な愚か者」がいいようです。リンク対応します。ブログ楽しみにしています。

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