2011年3月17日木曜日

其 微衷ヲ憐ミ継紹ノ人アラハ

大震災は、あいかわらす危機的状況である。物資不足を訴える被災者の姿に、心が痛む。原発のほうもギリギリの戦いが続いている。関係の方々の奮闘をお願いするしかない。頑張ってください。

また、昨日KivaJapanで融資を断念したことを書いたが、さっそくボランティアのOさんから、メールの返信が来た。夜遅くまで、いろいろリサーチした上で、さまざまなアドバイスを何回もいただいた。結局だめだったけど、KivaJapanの責任者のYさんからもメールをいただいた。申し訳ない思いである。22日に再挑戦したいと思っている。KivaJapanの姿勢、大したものだと思う。ここまでしてもらうと、改めてKivaJapanの信頼性が高まったのであった。お礼を申し上げたい。

さて、今日という日は、このブログのタイトルでもある『留魂録』を記しておかねばならない。『留魂録』とは、吉田松陰の遺書である。特に有名な第八節である。

松陰は、死に際して、人の一生を四季にたとえる。十歳で死んだとしても春夏秋冬がある。十歳を短いというのは、夏の蝉(セミ)を長生の霊椿にしようと願うことである。百歳が長いというのは、霊椿を蝉にしようとするようなことであると、人生の長さはどうでもよいことだと言う。松陰は三十歳、すでに四季は備わっている。花を咲かせ、実もつけたはずだ、ただそれが単なる雑穀のような小さな実なのか、成熟した栗の実なのかは、私の知るところではない、と述べる。さて、ここからは、原文と現代文訳を併記したい。
若シ同志ノ士其微衷ヲ憐ミ継紹ノ人アラハ乃チ後来ノ種子未タ絶ヘズ自ラ禾稼ノ有年ニ恥サルナリ同志其是ヲ考思セヨ
もし同志の諸君の中に、私のささやかな真心を憐れみ、それを受け継いでやろうという人がいるなら、それはまかれた種子が絶えずに、穀物が年々実っていくのと同じで、収穫のあった年に恥じないことになるであろう。同志諸君よ、このことをよく考えて欲しい。

今日は、転勤内示の日であった。この3月で私は、本校を去ることになった。9年間の四季で私が花を咲かせ、実を十分つけたと思う。ユネスコスクールという大きな実を作ることはできなかったけれど、私の担任した学年を中心に、数多くの花を咲かせてきた。きっと素晴らしい、さまざまな栗の実をつけるに違いない。ありがたいことに、本当にありがたいことに、私には「其 微衷ヲ憐ミ継紹ノ人」がいる。こんな幸せなことがあろうか。
先日、卒業式の日に、ある卒業生から記念品と手紙をもらった。あまりに嬉しい内容なので、恥ずかしいが、”今日だからこそ”記しておきたい。『…生まれて初めて出会った松陰先生です。塾生として理想のもとに頑張っていきます。短い間でしたが、濃い1年間でした。…』今までもらった生徒諸君からの手紙とともに、私の最大の宝物として大事に大事にしていこうと思う。9年間、本当にありがとう。

転勤先は、体育科や武道科もあるH高校になった。ここで私が何をできるのかわからないが、卒業にあたっていつも私が記す『理想に生きることをやめた時、青春は終わる』を胸に、定年の時、同じような手紙をもらえるよう、新たなESD実践の四季をつくっていきたい。

明日、秋田商業高校へ旅立つ。秋田は、被災していないが、空港に着いたら、ともかくも東南に向いて黙祷するつもりでいる。

5 件のコメント:

  1. 今朝、ブログを拝見しました。とても感動しました。
    志半ばにあらず、志の途上である先生の意思は、単なる個人の意思に留まらず、周囲の人々との共通の意思へと昇華されているように感じました。

    先生の意思は次の学校でも受け継がれると信じています。

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  2. 転勤ですか…寂しくなります><
    フランスから帰ったら、また辻先生とお会いできることを楽しみにしています^^
    気をつけて秋田に行かれてくださいね!

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  3. 秋田のホテルから、コメントを返信しています。さきほど秋田でも震度3の揺れがありました。昨日は大感激の1日でした。詳しくは下阪にブログで紹介したいと思います。転勤先でおおいに頑張ろうという勇気を秋田商業高校の先生方からいただきました。秋田はすごいガソリン不足で、コンビニなどは商品が品薄になっています。やはり被災地に近いことを実感します。
    鉄平さん、コメントありがとうございました。ちょっと恥ずかしいです。(笑)
    あやっぺ、コメントありがとう。こうして「其微衷ヲ憐ミ継紹ノ人」からメールをもらうと嬉しいです。大阪着後、帰宅前に、”パカパカのY君”と会うことになりました。

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  4. お疲れさまでした。新任校でさらなるご活躍を!
    実は私も4月から専門学校に加え、高校でも非常勤講師として勤務することになりました。試験対策が中心です。当面はそのための資料づくりが中心になりそうですが、その中でも何か一つ、彼らの心に引っかかりをつけることができればと思っています。
    いつも刺激をもらえるこのブログも引き続き愛読していきます。

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  5. 非常勤講師さん、コメントありがとうございます。さっそく、転勤を聞きつけたOGと秋田から岐路に待ち合わせして会いました。獣医をめざしている馬術部のOGです。今日しか会えないとのことでした。ありがたいことです。実は、このブログも、昨年の3月末以降は、転勤を前提のこととして書いてきました。1年間、相撲でいう”シキリ”をしてきました。本校でやれることを全てやりきって、17日を迎えました。悔いはありません。

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