2010年11月26日金曜日

アフリカの工業の問題点を探る

ケニアのTUSKERビール
アフリカ開発経済学も、鉱工業の考察に突入した。今日は、工業について語った。アフリカのこれまでの工業の特徴は、「装置工業」であったことである。ブルキナに行った時、「ファンタ・オレンジ」をアホほど飲んだ。これは国内で製造されているとのこと。製品が重いので、輸送経費を考えて、飲料の製造は、市場立地型の工業になる。しかも価格が比較的安価なので、アフリカ3の人びとも無理をすれば買えないことはない。人口が少なく、市場規模も小さなブルキナでもビジネスが成り立つのであろう。アフリカには、様々な工業製品化された地ビールがある。これらは、国内で造られている。ケニアの”TUSKER”などは有名である。問題は、「装置工業」であることである。

 すなわち、2つの大きな問題点があるわけだ。装置工業は、生産の主体が機械であり、雇用人数が少ない、ということだ。アフリカの工場労働者の賃金はアジアより高いこともしばしばである。もう1つは、設備投資に資金がいる工業であることだ。当然外国資本有利となる。このうち、特に重要なのは、雇用人数が少ないことである。農村から都市に出てきた若者には、工場での雇用のチャンスは極めて少ない。ほとんどの若者は、インフォーマルセクターに滞留することになる。これでは、1人あたりのGDPは上がらないのである。(アフリカの他の業種、たとえば金属精錬とか石油精製とか、他の工業も装置工業であることが多いのである。)

装置工業は雇用を創出しがたい
サブサハラアフリカで多くの雇用を実現し、1人あたりのGDPを向上させた国に、インド洋に浮かぶ島嶼国モーリシャスがある。中国系のツテだと思われるが、香港からの繊維製品の縫製業で1人あたりのGDPを押し上げている。ここは、生産性の高いサトウキビ栽培は行うが、他のアフリカ諸国のように食料とする穀物はほとんど生産していない。人口が少ない(約100万)こともあるが、特化することで成功しているのである。(最近は観光業でも儲けている。)
 
 雇用を多く生む工業の誘導、それに伴う投資を得ることが、農業生産性の向上と共に重要なのである。このところ、あの内乱に翻弄されたモザンビークに、投資が集まり、雇用が創出されていると聞く。モザンビークの市場規模も大したことはないが、モザンビーク海峡に面し海上輸送に有利であるからかもしれない。たとえ、安価な賃金でも、多くの労働者が雇用されれば経済は上向く。
 中国の副主席も頑張ってアフリカを回っているが、日本も頑張ってくれているみたいだ。『25日、丸紅は、アフリカ南部、アンゴラの政府から首都ルアンダにある繊維工場の改修工事を請け負ったと発表した。内戦で疲弊した繊維産業と綿花栽培を復興させ、雇用を創出する政策を支援する。(時事ドットコム2010/11/25-16:17)』これには、他のニュースから、国際協力銀行(JBIC)と三菱東京UFJ銀行の協調融資ということもわかったのだが、アンゴラはかつての内戦で無茶苦茶になった国だ。しかし、最近は石油生産で年10%以上の経済成長を見せている。このレントをうまく生かして開発を進めて欲しいものだ。なにより雇用である。

 今日の授業はちょっと難しかったかもしれないが、やっぱり皆真剣に聞いてくれた。ありがたいことである。

追記:今さっき、NHKニュースで、ルワンダのIT化の国家戦略のニュースを流していた。子供達までが手動の蓄電装置付きのパソコンを持ち、アフリカにおけるITと金融のセンター化を目指していた。20年後を見据えての国家戦略。やはりガバナンスが重要である。頑張って欲しいものだ。

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