2010年11月25日木曜日

アフリカに緑の革命は必要か?

ケニアのマクエニ県の農家にて
そろそろ期末考査である。3年生国語科の現代社会も、追い上げの時期に入ってきた。今日のテーマは、一通りアフリカの農業について学んだ上で、緑の革命の導入の是非を生徒に問うことであった。アフリカの農業と言えば、コーヒーやカカオなどのプランテーションと考えてしまうが、実際は内向きの食料自給が中心である。気候や土地が悪く、それでも南ア以外の国では食料が自給できず、食料を輸入せざるを得ず、国富をそれに当てているのが現状である。では、アジア諸国が成功したように、緑の革命を導入すべきなのだろうか。品種改良(ハイブリッドなどの品種)、化学肥料や農薬の導入、灌漑設備、土壌改良などで、生産性の向上をはかった緑の革命。さて、これを導入した際のメリット、デメリットを考えてみようと誘う。

 「メリットの意味わかるかぁ?」「利点です。」「いや、シャンプーの名前や。」などと笑わせてから討議に入る。この辺の私のギャグは低レベル=オヤジ級だが、生徒によると、時々極めて高レベルのギャグをかますそうである。本校のOGが昔、国語の授業の課題でこんな川柳をつくった。「Tやんのギャグが時々わからない。」解説には、「皆が大笑いしているのに、そのギャグの意味が判らず悔しい想いを何度もした。」とあった。(笑)ちなみに私は、Tやんという愛称で呼ばれている。

 メリットは?と聞くと、「生産性が向上する。」うむ。だから?「食料を輸入しなくてすむ。」うむ。で?「貧困から抜け出せる。」うむ。他には?「うーん。」という声。テキストに書きこむ者、真剣に考える者、相談する者。いろいろである。さすがに、『保健衛生などの分野で、幼児死亡率が下がれば、人口増となるやんか。その対策として有効かな。』という私の説明に、なるほどと納得の声が上がる。 
 デメリットは?と聞くと、「土地が悪くなる。」うむ。インドなどは塩害が出たと先日教えたのを覚えていてくれている。エライ!…それからが続かない。もっとデメリットはないかな?たとえば、肥料や農薬や、ハイブリッドの種はどうやって手に入れる?「お金がかかります。」うむ。「識字率が低いとうまくいきません。」うむ。で?ここが重要やが…。たとえば、このクラスが一つの村だとする。お金があり、教育もある農家はうまくいくかもしれないけれど…。「格差が開きます。」そう。格差が開くと、どうなる?情の経済は?ハランベー(ケニアの相互扶助の精神を意味する語)は?「アフリカの良さがなくなる」「農村が崩壊する」などの声があがる。

 何度も主張するが、私は、こういう授業が大切だと思っている。社会科は暗記教科ではない。


ブルキナのワガ近郊の農村
ある意味エコな農業であるアフリカの低生産性農業には、伝統的な良さもある。この基盤の上にアフリカ的な情の経済や地縁・血縁社会が育まれてきた。緑の革命は、貧困を克服する可能性があるが、そういったこれまでのアフリカ的なるものを破壊する危険性をも含んでいる。これは、今、日本が回答を迫られているTPPとも絡んでくる。日本の農業を守るべきか否か。グローバルな経済効率と伝統的なニッポンが対立している。自分たちの話でもあるのだ。 受験を控えている者も多いので、ディベートする余裕はない。そこで、とりあえず意見を聞いてみた。

 アフリカに緑の革命は必要か?是40%非30%というところだった。
 ちなみに私は、是と答える。貧困撲滅と人口増に対応するためには必要不可欠である。ただ、環境問題や、教育の普及も含めて慎重に進めていく必要があると思う。アフリカの伝統社会は、そう簡単に崩れないだろう。しかし少しずつ変化することはやむを得ない。授業では判り易く、二元論的に論じたが、現実はもっと複雑である。高校生の授業としては、ここまでがギリギリ限界かと思う。

3 件のコメント:

  1. アフリカの伝統はまだ残っています。日本の伝統文化は残っているのでしょうか。最近の祖母の葬式以降、そのことについてずっと考えています。葬式や結婚式はどんどん形を変えているようです。親しい人たちだけ集めてやろうと。でもそれは葬式や結婚式ではなく、お別れパーティと結婚パーティだと思います。公なるものと私なるものの区別がなくなっている気がしますし、そのことに危機感を持っている人が親の世代にも少ないようです。アフリカの貧困はもちろん削減すべきですが、伝統、文化、慣習は代え難いですね。

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  2. 貧困の削減はもちろん大事ですが、伝統、文化、慣習は代え難いですね。先日、祖母の葬式があり、そのことについてよく考えます。最近の結婚式や葬式は仲のよかった人だけ呼んだり、当人が満足すればそれでよしとすることが多いようですが、それではお別れパーティであり、結婚パーティである気がします。私なるものと公なるものとの違いが曖昧になっているようです。

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  3. 哲平さんへ。BLOGGERのコメント機能が少しおかしく2つのコメントがスパムという場所に入っていました。で、2回もコメントいただくハメになってしまったようです。先ほど解除しました。すみません。生徒諸君の緑の革命への否定派30%は、哲平さんと同様、アフリカの良さを残すべきだという考えを持つ者だと思います。この辺、非常に難しい論議になりますが、この30%は大事にしたいですねえ。

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