MDGsサミットで、オバマ大統領がアメリカの世界開発政策を発表した。ちょっと長いが、CNNのニュースからの引用である。
『オバマ米大統領は22日、ニューヨークの国連本部で開かれた「ミレニアム開発目標(MDGs)サミット」で演説し、地球規模の発展を目指す包括的な発展途上国支援を実現するための米国の「世界開発政策」を発表した。
この中で、オバマ氏は「開発は慈善ではない」ことを強調。米政府が途上国への支援の取り組み方を変える方針であることを明らかにしたうえで、今後の支援策の基本となる4つの柱について述べた。
オバマ氏は最初の柱として、「発展の定義」を変えるべきだと主張。従来のような支援金、食料、医薬品の供与といった物質的な援助だけでなく、「真の意味でその国の発展を促し、貧困から繁栄への転換が実現できるものであるべきだ」と指摘し、そのために、米国は外交から貿易、投資政策まで、すべての手段を利用すると述べた。
2つ目の柱としては、「発展の最終目標」がどうあるべきかについても、見直すべきだと言明した。「数百万人が数十年にわたり食料援助などに頼っている現状は、発展ではなく依存を生み出しているだけだ」として、途上国が悪循環を断ち切り貧困から抜け出すための援助が必要であることを表明した。
また、3つ目に、「広範囲にわたる経済発展」の重要性を指摘。極度の貧困状態にあるアフリカ諸国なども「ミレニアム開発目標」の達成に向けて前進すべきであり、米国は、民主化の進展に努める途上国に対して支援を行う意向だと述べた。
そして最後の4つ目に、「米国およびその他の国々が、より多くの責務を果たすこと」を挙げた。ひとつの国の力だけでは開発目標を達成することは不可能であり、他の国の政府、さらには様々な基金、民間団体、NGOなどがコミットしていくことが必要だと言明した。
米政府当局者によると、この政策は、世界金融危機を受けて、米政府がどのように支援の対象を絞込み、効率的に支援活動に取り組んでいくかを1年間にわたり検討した結果、採用されたものだという。』(下線は、私がひいたものである。)
これは明白なる天命の国是と、現在の経済状況を止揚させた見事なアメリカ的演説だと私は思う。もちろん、私は開発経済学や国際政治の専門家ではないし、演説の全文を読んだわけでもないので、まあしょせん現場の高校教師の感想と受け流していただきたい。
MDGsは、長期的な開発目標である。先進国がGDPの0.7%程度をODAとして拠出し、保健・教育といったアマルティア=センの主張する潜在能力を発揮するための最低限のプロジェクトに効果的に資金を配分すれば、大きく途上国の状態は変わった可能性がある。ジェフリー=サックスの想定した政策は決して無理難題ではなかったはずだ。ところが、サックスの母国・アメリカは、このMDGsに積極的だったわけではない。
アメリカは、たしかに”世界の警察”として、『人間の安全保障』的な食料支援などには熱心で、必ずUSAの文字が書かれた援助物資の画像にぶつかる。しかし、それが世界のアメリカ支持に繋がらない事実(9月11日付ブログ参照)にイラついているように思える。よって、新戦略が打ち出されている。これからは、外交・貿易・投資など全ての手段をとるというのである。ただし、それは「民主化の進展に努めている途上国」に対して行われるのである。最後の他の国や基金、NGOにもそれに従うよう求めているわけだ。悪意をもって聞けば、このような感想になる。
一方、善意で聞けば、この転換はおよそ正しい。この「民主化」という定義を、ポール・コリアーの主張するように、単に民主主義のルールに一応則った”選挙”を行っているという、低いレベルではなく、言論の自由が保障された野党やマスメディアが存在し、汚職を監視できるような体制とするべきであろう。
さらに、他のニュースの情報から、アメリカが支援強化しようとしている国は、タンザニアやシエラレオネ、リベリアなどだという。うーん、私には、タンザニアは東アフリカのイスラム原理主義への牽制に見えてしまう。シエラレオネやリベリアには、英米の黒人奴隷解放との歴史的からみがあって、完全に新鮮味にかけるのである。ここで、台湾と国交のあるブルキナやサントメ・プリンシペを支援すると言ったら、見事にアフリカに大々的に進出している中国にガツンと言わせたことになるのだが…。(笑)まあ、先日(21日付ブログ)も述べたように、国益を離れた議論にはなっていないのは仕方がない。しかも「効率的に支援活動に取り組んでいく」という”プラグマティズム”的表現で終っている。見事にアメリカ的演説であったといえるだろう。
追記:今日は、MW校生は、ホスト生と共に京都観光(6月16日付ブログ参照)である。雨の中、三年坂で滑らなかっただろうかと心配である。
2010年9月23日木曜日
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