2024年2月28日水曜日

高校教育現場の社会学2

https://ameblo.jp/fuuboku-kamakura/entry-12316957928.html
高校教育現場の社会学・続編である。先日、管理職(校長・教頭)は、教務に詳しくないと学校運営上、大変であると書いた。教務と言っても一般の方には、内容かわからないと思うので、私の経験した限りにおいて説明しておきたい。学校経営の基軸的な部分なので、教育現場の社会学というタイトルとの矛盾はないと思う。

教務の仕事はいろいろある。文科省の学習指導要領の規定に添いながら、カリキュラム、時間割、日程、成績、出欠、指導要録、そして入試などの仕事を司る。カリキュラムは、各学年でどのような教科・科目を履修するかという話である。ある意味で、その学校の特色と言うか、カラーが明確に出る。私は、様々な学科を見てきた。商業科、工業科、英語科、国語科、普通科、体育科、武道科という多彩さである。

商業科のメインは、簿記や珠算で、当時は英文タイプや和文タイプなどという科目あったし、商法や税務会計などという法律系の科目やパソコンのない時代ながら情報処理もあり、商業実践という実習もあった。当時大阪市立の商業高校は数校あったが、時代の変化とともに、どんどん統廃合や特色化がなされていった。工業科は、機械科や電気科を中心に、建築科、土木科、工業化学科などがあるのだが、理論(物理に近い科目が多い)と実習に分れていた。私は、機械科の担任を2回6年間したので、機械科の実習については少し詳しい。工場で旋盤や特機(ドリルなど)を扱ったり、鋳造や鍛造をやったり、溶接をやったり、さらに製図も必須だった。今ならコンピュータでCADなのだろうが、当時は手書きだった。提出期限が迫り、クラスの殆どの生徒が居残りで製図していたのを激励に行ったこともある。英語科は、文法や読解力を高めるとともに、3年生の段階で英語でのディベートができるようなカリキュラムが組まれていた。ALTも常時4人いて、ゼミ室で会話のスキルを磨いていた。(生徒の英語力については大したもので、現在で言えば共通テストで何人満点が取れるかが話題だった。)国語科も面白いカリキュラムで、どちらかといえば、古典に重点が置かれていた。体育科も、理論と実技に分かれていた。当然ながら体育科の生徒は自分の部活が中心だが、それ以外の競技力も磨くように実技が組まれていた。武道科も同様で、武道論などという極めて特殊な科目もあった。普通科は、だいたい2年時から文系と理系に分かれ、さらに進学校ではなかったので、膨大な選択科目を履修することができた。

時間割を組む作業も何度かしてきた。昔は、時間割を組むのに、コマ(科目名とが書かれた直方体の木:教科で色分けする。カリキュラムの改編などがあると色を塗り直し、書き換えるので大変)をはめ込む板(縦軸に教員名が並び、横軸は一週間の時限となっている。画像参照)があって、埋めていく。まず、各先生方から出された公務(ある曜日の午後から出張が多いとか、非常勤の先生の来れない日とか)に関する授業が不可能なところに無駄コマ(生木で無色のもの)を入れてから、体育や家庭科の食物実習・被覆実習や理科の実験室を使用する授業を先に入れて行く。運動場や体育館、実習教室の使用クラス数制限があるからで、商業科や工業科の実習科目も同様。これらは、コマを埋めたら変更なしでいくのが基本。来られる曜日の指定がある非常勤の先生がいる場合、この次に埋めていく。私事(子供や介護のことで朝1現目を開けてほしいとか)は、可能なら対応するが、なかなか難しい。国語、数学、理科(実習以外)、そして私の社会など教室で講義する教科は比較的自由に動かせるので、その後になる。同じ日に同じ科目が重ならないのは当然、先生方によって、3連発の授業でもいいという人もいれば、2連続までにしてほしい人もいるし、できるだけバランスを取りながらコマを埋めていくわけだ。後になればなるほど、コマを埋めるのに時間がかかる。詰将棋のような感覚である。日々の時間割を変更する場合も、この大時間割を眺めて可能な移動を推し量るのである。現在は当然ながら、コンピュータのソフトで行うが、最後の調整は人力になると思う。1年間の日程も組まねばならないし、指導要録の点検やら新クラスの生徒名列も作成しなければならないし、教務は入試から春休みが一番忙しい。

最後に、成績と出席の件。成績の出し方(平常点の割合や欠点のライン=点数と出席日数など)や出欠の扱い(遅刻をどう見るかが大きなポイントになる。3回で1回欠席とする学校もあったし、各校色々である。)高校は、義務教育ではないので、原級留置(=留年)がある。よって、特に出席日数は厳密に見なければならないし、1教科でも欠点があればダメなのか、科目数と単位数でルールが定められているのか、1学年ごとで見るのか、累積し卒業時の3年間トータルで判断するのか、これもまちまちである。こういう細かなルールを管理運営するのも教務の役目であるし、入試も教務が中心になる学校が多かった。

教務の仕事は、完璧にこなし100点満点であることが求められる。コンピュータの進歩とともに、情報処理的な能力が問われることも多くなった。実は、生徒諸君の目にはあまり映らないが、責任重大で、大変な校務分掌なのである。

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