彼は、仲間とともにアメリカ船に救助される。最も年少であった。最初に船頭が病死する。残る者もやがていくつかのグループに分かれて行く。彦蔵は多くの良き米国人に恵まれ、篤実家によって英語や商業の教育を受ける機会を得るのだが、日本人の誠実さと真面目でよく働くという徳目が自然と気に入られたのであろう。そういう感想を抱かざるをえない。
その後の仲間や他の漂流者の話も出てくるが、一応に船乗りなので洋船の仕事を手伝うのが当然で、その中で操船術を身に着けていく。それまでの異国船打払令が中止となった後なので、帰国できた者の中には、各藩の大船建造禁止令も解かれ、武士となり、洋式帆船の建造や運行に関わった者も多く出ている。漂流民の中では幸運な人々だと言える。
彦蔵自身はと言うと、可愛がられながらもかなり多くの職の変遷をしている。アメリカでは、それが当然なのだが、面白い。
ちなみに、彦蔵は、最も世話になったサンダース家の奥さんからカトリックの洗礼を受ける事を承諾する。このことはキリシタン禁制にひっかかるので、帰国の障害と鳴った。そこでサンダース氏がアメリカ国籍を取得させる。要するに、アメリカ国籍を取得した第一号であるわけだ。また3人の大統領に会っている。国務長官や海軍のトップとも会っている。彼の周囲には親切で彼を愛する実力者がわんさかいたのだった。…つづく。
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