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アクーニン氏は、元日本文学研究者で、「悪人」からペンネームを着想したそうだ。(笑)帝政ロシア末期を舞台にした探偵小説「エラスト・ファンドーリンの冒険」が1500万部売れている。主人公のファンドーリンは、ロシア版シャーロック・ホームズと呼ばれ、英国紳士に近い存在。つつしみ深く己の理想や善悪の判断に従う。調和を重んじる日本的な面もある。これらは、ロシア人に欠けている資質で、それを体現しているがゆえに人気があるのだ、とアクーニン氏は語っている。(凄いな。)
彼は、11年末反プーチン運動に参加したが、12年大統領に返り咲き。14年クリミア半島編入。一気に8割の支持率を得た。「問題はプーチンではなく人々の精神性にある。」他国が恐れる偉大な国の市民であるという「帝国主義の麻薬に酔っている。」と指摘。
…チェルノブイリの本を読んだとき、そういうロシア人(ソ連邦下のベラルーシ人・ウクライナ人も含めて)的な感覚を少しばかり理解した。WWⅡでドイツに勝利したことを、かなり経っても誇りにしているトコロや、爆発した発電所の屋上にソ連国旗を何度も掲げるクレイジーな行為など、単に命令故とはいえない民族的資質としか言いようのないものを感じた。
アクーニン氏は歴史の執筆にも力を注いでいる。何故ロシアは自由化の試みが常に強権支配の復活で終わるのか、その問題の根源と処方箋は過去にあると信じ、9世紀からの歴史を紐解く。ロシアの歴史はプロパガンダに利用されてきた。客観的な視点を読者に示したいと言う。現在、3巻で70万部読まれている。彼は、現在のロシアを1907年から17年と重ねている。各地の反政府運動や暴動が沈静化した1907年からロシア革命が起こった19017年である。市民社会の挫折、経済危機、外敵を求め大衆の目を国内問題からそらすといった兆候をもとにしているらしい。彼は、もはや平和的な民主化のチャンスはないと考えているという。
…日本もアメリカも、そしてロシアもそうだが、なにか歯車が狂ったような反知性的な政治状況が起こっている。アクーニン氏が、そのアンチテーゼとしての小説や歴史観を提示しているというのは、実に面白いと思う。私はこういう推理小説を読む習慣はないのだけれど、ちょっと興味がわいた次第。
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