2016年3月26日土曜日

「イスラームとの講和」を読む。

中田考氏が同志社の内藤正典教授と対談した集英社新書(イスラームとの講和 文明の共存をめざして 本年3/22付発行)を新聞の広告で見つけ、すぐ買ったのだが、読むのに意外に時間がかかった。マレーシア行の件もあって通勤時に熟睡することが多かったからだ。おそらく2日もあれば読みきると思ったくらい、内容は興味深い。

新刊なので、あんまり内容について書くのは憚れるのだが、この新書を貫いているのは、ヨーロッパ(もっと言えばキリスト教的な領域国民国家)への辛辣な批判である。内藤氏は、中東問題の専門家であるが、フランスには特に厳しい。フランス革命以来の国是「自由・平等・博愛」の博愛(フラテルニテ)は「同胞愛」(一つの組織に参加して兄弟の契りを交わすという意味に近い。)である。つまり、身も心もフランスに捧げて同化した移民はフランス国民として平等に愛してあげるけれども、少しで違う行動をするなら受け入れられない。ましてや、宗教を表に出した場合は国から出ていけ、というわけだ。

こういうヨーロッパの姿勢が難民の問題を生んでいる。イスラームは客人という概念を持つ。それに対してヨーロッパは…というわけだ。

基本的に中田氏も内藤氏も、イスラムとヨーロッパ(キリスト教世界)は共生できるとは考えていない。それ以上に難しいのは、スンニー派とシーア派の融和である、と。お二人が期待しているのは、サウジやエジプトではなく、トルコである。現エルドアン大統領は、スンニー派を代表するカリフ足りえるか、という話は実に面白い。現在、トルコはオスマン帝国時代の学知を復活させようとしており、シリアの法学者を多く抱えているのだ、という。これからは、アラビア語・トルコ語・ペルシア語を操れる専門家が必要になるとの二人の話は現実味をもっている。

今日は、教え子の諸君から何通かメールが届いた。ずいぶん久しぶりの教え子もいて、嬉しい。また、ブログを見てくれた後輩M氏の突然の訪問もあった。ほんと、有り難いことである。学校の荷物を車で自宅に運んだりと多忙な日々であった。

そうそう、面白い資料もあった。ISに対する諸国民のイメージ。レバノンなど100%好ましくないなのだが、マレーシアは64%。好ましいは11%(ナイジェリアの14%に次いで多く、セネガルと同じ)。ちなみにわからないは25%という意外な結果だった。

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