日経の朝刊に、週刊ダイヤモンド最新号の広告が載っていた。少し高い(710円)けれど、今受験に励む生徒2名の小論文の指導にも役立ちそうなので、購入した。特集は、世界史と地図を学ぶ国際情勢「地政学超入門」。
プロローグは、世界に拡散するテロの脅威として、世界地図を色分けしてあったりする。こういうのは雑誌らしくていい。
パート1は、佐藤優氏の地政学とは何か?である。地政学者・奥山真司氏の『戦略の7階層』(世界観、政策、大戦略、軍事戦略、作戦、戦術、技術)が面白い。米国や中国が得意とする領域は最初の2つ。地政学が最も必要になる領域が大戦略、戦後日本が得意にしてきたのは、それ以下の4つ。反対にい言えば、大局観や地政学的な思考は苦手だということになる。
パート2は、茂木誠の経済史講義。少ない紙面で、かなり無理があるのだが、見開き2P分の「ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の経済観」という記事は面白かった。
パート3は、「この国が見ている世界」と題して、国ごとの世界観と行動原理がコンパクトすぎるほどにまとめられている。米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、トルコ、イスラエル、イラン、サウジアラビア、中国、韓国、北朝鮮、インド、インドネシア、そしてイスラム国。それぞれ、なかなか面白い。
エピローグは、「(1月28日慶応大学にて)エマニュエル・トッドの語ったヨーロッパの宗教的危機」である。今日、フランスでは多くの人が宗教的なものに距離を置こうという動きがあるのだ、という。「私は神を信じない。」と公然とアピールするという現象が起こっている。呪われた宗教と位置づけされるイスラム教の影響かもしれない。トッド氏は、地域別に宗教的な行動や感情に関する統計データを追ったところ、ヨーロッパでは過去3回、脱キリスト教化といえる動きがあったという。
1つは、18世紀半ばにパリ盆地・南イタリア・南スペインを中心にカトリックの集団的な信仰が消えた。1世紀足らずの間にフランス革命が起こった。
次は、1870年から1930年にかけて、ドイツ、英国、スカンジナビア半島など北ヨーロッパでプロテスタントの信仰が薄れた。程なく、ナショナリズムが台頭した。1932年ナチが第一党となったが、ルター派が多い地域の得票率が高かった。トッド氏は「集団的な信仰としての宗教が消失すると、しばらくして極端なイデオロギーの勃興が見られる。」と述べている。
第3の脱キリスト教化の波が訪れたのは20世紀末から2010年ごろ。フランスでは、まだカトリックの信仰が残っていたパリ盆地の東や南西部で教会に行ったり司祭になるという行為が消失した。同じくベルギー、オランダ、スペイン、アイルランド、ポーランドなどでも生活におけるキリスト教の実践が薄れてきたという。トッド氏は、宗教的なものの消失をカトリックの保守的な教えからの解放、近代的になったと受け取っているように見える、そしてその中でイスラムという宗教をスケープゴートとするような動きがあると指摘。先日のパリの風刺週刊誌シャルリ・エブド編集部襲撃事件後のデモなどは、表現の自由を語り、共和主義の価値を語るリベラルなデモに見えるが、本当のテーマは、マイノリティーの宗教(イスラム教)を批判・排除するものだと批判する。
なかなか読み応えがあった次第。
2016年2月8日月曜日
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